『じいちゃんの怖い話』
おじいちゃんが話してくれた、むかしの話・・・
幽霊よりも人間の方が、よほど怖いと言う話・・・
嘘から出たまこととは、こう言うことをいうのだろうか・・・
今回は世にも恐ろしい怪談話『じいちゃんの怖い話』をお伝えします。
毎度おなじみ心霊界の石原さとみこと、コワイキョウコです・・・
人間のみなさんって、夏に肝試しにいくなんて人がいますよね。
どんなものかと思って、キョウコも先日、夏じゃないけど肝試しに行ってみたんです。
でも、オバケも怖いものも、何も出なくてがっかりしました。
なのに最近、キョウコが肝試しにいった、その場所は本当にオバケが出るって噂になってるようなんです。
聞くところによると、麦わら帽子を被った口が血だらけの女が出るそうです。
キョウコが行った時は、何も出なかったのに・・・
やっぱり霊感がないとオバケに合うのは難しいのかもですね。
それでは今回のお話は・・・
『じいちゃんの怖い話』
学校で語った、作りものの怪談話・・・
いつしか、その話がまことしやかに噂され、ついには本当に出たなんて大騒ぎに・・・
ただの作り話がなぜ・・・
それではお楽しみください・・・
※このお話は3分ほどで読むことが出来ます。
『じいちゃんの怖い話』【怖い話シリーズ8】
私がまだ小学校低学年の幼い子供だったころ、趣味で怖い話を作っては家族や友達に聞かせていた。
「僕が考えた怖い話なんだけど、聞いてよ。」
ときちんと前置きをしてからだ。
特にじぃちゃんが私の話を喜んで聞いてくれた。
私はそれがとても嬉しかった。
熱心に聞いてくれるのと同時に、こわがってくれたから。
そんな折、私の作った話がクラスの中で流行りだした。
放課後の男子トイレで個室を叩くとノックが返ってくる・・・といったありがちな話。
クラスの女子の間であっという間に流行り、噂は学年中、学校中へと広まった。
「男子トイレの前で手招きする男の子を見た」とか言い出す女子も出てきた。
私がやっとその噂を知って「僕の作り話だってば」と言ってもきかず、その後もまことしやかに囁かれ続けた。
ついにはそこで肝試しを始めるグループまで現れた。
その肝試し、なにも起きるわけがないのに・・・
グループの子供が皆「ノックの音が返ってきた」と言った。
大変な騒ぎとなった。
そんなワケないだろ!?と思って作り話だということをアピールしようとしたが・・・
当時の私は皆に冷たくされるのが怖くて言い出せなかった。
しかし、そのうち私は自分の話が本当になってしまったのではないかと思うようになり、すごく恐くなって自作の怖い話をすることをやめた。
その騒動があってからしばらくして、じぃちゃんが怖い話をしなくなった私に「もう怖い話しないのかい」と聞いてきた。
私は泣きじゃくりながら、その話をじぃちゃんにした。
ほうかほうか、とやさしく聞きながら、こんなことを話してくれた。
それはな、みんなが坊の話を本当に怖いと思ったんだ。
坊の話をきっかけにして、みんなが勝手に怖いものを創っちゃったんだよ。
怖い話を作って楽しむのはいい・・・
だけど、それが広まってより恐ろしく加工されたり、より危険なお話を創られてしまうようになると少々、困ったことになる。
いつの日か「それ」を知ったワシらの目には見えない存在が、「それ」の姿に化けて本当に現れてしまうようになるのかもな・・・
あるいは目に見えるものではなく、心のなかにね。
「おそれ」はヒトも獣も変わらず持つもの・・・
「おそれ」は見えないものも見えるようにしてしまう・・・
本能だからね。
だから、恥ずかしくないから、怖いものは怖いと、ちゃんと怖がりなさい。
そして決して近寄らないようにしなさい。
そうすれば、本当に酷い目にあうことはないよ。
私は、じぃちゃんも何かそんな体験をしたのかと思って聞いてみた。
「じぃちゃんも怖い思いをしたの?」
すると、予期しなかったじぃちゃんのこわい話が始まった。
昔、じぃちゃんは坊の知らないすごく遠くのお山の中の村に住んでいたんだよ。
そこで、じぃちゃんの友達と一緒に、お山に肝試しに行ったことがあるんだ。
そうだね、じぃちゃんが今でいう高校生ぐらいのころかな。
お地蔵さんがいっぱい並んでいたけど、友達もいるし全然怖くなかった。
でも、帰り道にじぃちゃんの友達が、お地蔵さんを端から全部、倒し始めたんだ。
「全然怖くない、つまらない」って言ってね。
じぃちゃんはそこで始めてその場所に居るのが怖くなったよ。
なんだかお地蔵さんに睨まれた気がしてね。
友達を置いてさっさと逃げてきちゃったんだよ。
そうしたら、その友達はどうしたと思う?
死んじゃったの?
ううん、それが何も起こらないで普通に帰ってきたんだよ。
でも、じぃちゃんはもうそれからオバケが怖くなって、友達と肝試しに行くのを一切やめたんだ。
その友達は、その後も何度も何度も肝試しといってはありがたい神社に忍び込んだり、お墓をうろうろしたり、お地蔵さんにイタズラしたり色々するようになってね。
周りの人からは呆れられて相手にされなくなっていったよ。
人の気をひくために「天狗を見た」なんていうようになってしまった。
じぃちゃんに「見てろ、噂を広めてやる」なんて言って、笑っていたよ。
そして、ある日、ふっと居なくなったんだ。
じぃちゃんもみんなと色々と探したんだよ。
そしたら・・・
山の中の高い木のふもとで、友達は死んでた。
木の幹には足掛けに削った後がてんてんと付いていてね。
友達は自分で木に上って、足を滑らせて落ちたんだ。
ばかなやつだよ。
坊、世の中には人が入ってはいけない場所っていうのがあるんだ。
それは怖い場所だ。
坊だったらタンスの上も、その場所だよ。
落ちるのは怖いだろ。
そういうことだよ。
じぃちゃんの友達には、怖い場所が見分けられなかったんだ。
怖いね。
ばちがあたったのかな。
いいや・・・怖いのはここからさ・・・
友達が死んでから、村の中のひとたちが次々に「天狗を見た」って言い出したんだ。
じぃちゃんは「あれは友達のでまかせだ」と言ったんだけどね。
友達が天狗の怒りに触れた、祟りだ、呪いだと、皆は自分達でどんどん不安をあおっていった。
夜通しで見張りの火まで焚いたんだ。
皆が顔をあわせるたびに天狗の話をするので、村の中がじめじめしていた。
そんな時に限って具合が悪くてね・・・
村の中でケガをするのが4件続いたんだよ。
どうってこともないねんざまで数に数えられてね。
どう見ても、あれは皆おかしくなってた。
さらに噂に尾ひれがついて、「天狗に生贄を出さなくては皆殺される」とまで酷い話になっていた。
そしてついに、本当に生贄を出そうという話をするようになったんだ。
友達が死んだのは木から足を滑らせて落ちたからなのに、完全に天狗のせいになってた。
村の中の皆も、人が入ってはいけないところに踏み入ろうとしていた。
それはね、人の命だよ。
誰にもそれを奪う権利なんてないだろうに。
じぃちゃんはね、天狗よりも村の中の皆がすごく怖かったんだよ。
だからね・・・
じぃちゃんは、その村から逃げてきたんだ・・・
じぃちゃんのこの話は、その後もねだって2度程聞かせてもらいましたが、「絶対に内緒だぞ」と言われ、両親の居るところでは決して話さなかった。
でも、今でも私の家には父方の実家はない。
農家の次男のじぃちゃんが、庄屋の娘のばぁちゃんと駆け落ちしてきたからだよと、私の両親からは聞いている。
じぃちゃんが私に自作の怖い話を聞かせてくれたのかとも思ったが、多分違う。
その長い話が終わった時、
じぃちゃんは大粒の涙をぼとぼと、私の小さな手の甲に落としたから。
今も思い出すと涙が止まらない。
『じいちゃんの怖い話』【怖い話シリーズ8】
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単なる作り話なのか・・・
『じいちゃんの怖い話』
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