オカルト・怖い話

『悪魔の最大の目的』【怖い話シリーズ7】

2020年3月9日

ある町の廃屋にいたという悪霊にまつわる怖い話・・・

『悪魔の最大の目的』

取り憑いて殺すことが目的ではない・・・

悪魔の本当の目的はすでに達成されつつあると言うが・・・

今回は世にも恐ろしい怪談話『悪魔の最大の目的』をお伝えします。

怖異 恐子
皆さん、こんにちは・・・

毎度おなじみ心霊界の石原さとみこと、コワイキョウコです・・・

日本人はなんで結婚式を教会で挙げる人が多いんですかね・・・

そこにいる神様を信じてるわけでもなく、ただみんながそうだからって理由だけで、教会で永遠の愛を誓い合う・・・

昨今の離婚率の高さを見ると、信じてもいない神様の前でする誓いほど、いい加減なものはないんだろうなぁって感じます。

それでは今回のお話は・・・

『悪魔の最大の目的』

ある地方にあったという廃屋・・・

そこにはある一族がいた・・・

呪い・・・

悪魔の恐ろしい目的・・・それは・・・

それでは続きをお楽しみください・・・

※このお話は5分ほどで読むことが出来ます。

『悪魔の最大の目的』【怖い話シリーズ7】

俺が高校生だった頃の話をします。

俺の家は教会で、親父が牧師をやってる。

まあ俺はそんな真面目にキリスト教を信じてたわけではないんだけど・・・

でも、あれを経験してからは、少し信心めいたものを持つようになったかもしれない。

そのきっかけになった出来事を、書くことにします。

とある夏休み、俺は外にも出ずに、ずっとゲームばっかやって過ごしてた。

暑い中、外に出るなんて考えられなかったから、マジで一歩も外に出ない日が一週間くらいは余裕で続いたりした。

でも、当時、仲の良かった連中とある日、近くの神社の縁日に行くことになった。

 

うちは教会で、教会はもちろんキリスト教だから、他の宗教の祭りに遊びにいくのは良くないんだが・・・

その辺、子供心をよく理解してくれてた親父は・・・

「良くない、ということだけわかってればいい」

と言って、俺がそういうところへ遊びに行くのも許してくれた。

 

そんなこんなで、友達たちと縁日へ遊びにいき、アホみたいに高い屋台で焼きそば食べたり、浴衣で来た女友達とか一緒に連れて、近くの公園でだべったりして遊んだ。

その場には6人くらいいたんだけど、その中で親友のAとその兄(以下A兄・大学生でガキのころから仲がいい)がいて、何を思ったか、肝試しをしようと言い出した。

俺は生まれた時から教会の中で育って、そういった霊的な世界の話もよく聞かされてきた。

だから、結構オカルトとか好きで、同じような趣味のAとA兄と、3人で廃墟に遊びに行ったりしたこともあった。

そのときは女の子と肝試しという状況に惹かれたこともあって、俺はそれに賛同した。

 

その場の半分の人間(俺・A・A兄)が賛同したために結局、全員肝試しに同意してA兄が運転するA家の車で、ある場所へ出かけることになった。

そのある場所ってのは、同じ市内の少し離れたところにある地域で、俺の家からだと小さな山を越えたところにあった。

ちょうど、その山の裏側にあたるその場所はうちの母親(母親には霊感がある)が・・・

「あそこは気持ち悪い」

といつも言っているような場所だった。

だから、おそらく何かあるんだろうなとは俺も思ってる地域だった。

 

ただ、その辺りは山間のためそんなに人家は多くなかった。

そのためか、それだけでそんな曰くつきの怪談が、とかそういうのは聞いたことがない場所だ。

俺はA兄が何でそこに向かうのか、最初から疑問だったので聞いてみた。

A兄が言うには・・・

「この間、じいちゃんから○○山(その場所にある山)の中に廃屋があるって話を聞いた。」

「場所を聞いたけど教えてくれなくて、それで何度か探しに行ったんだが、一昨日ようやく見つけたんだ」

ということだった

 

なるほど、まあ肝試しとしては悪くない・・・

俺はそう思い、すでに不安そうな顔をしている女友達をからかったりしながら、車がそこへ到着するのを待った。

10分ほどで車が停まり、A兄が・・・

「ここからは歩くぜ」

と言って降りた

まあ地元の人間でも知らなくて、しかもA兄が何度も探しに入らないと見つからないような廃屋だから、車では途中までしか行けないことは頷けた。

そこは舗装もされてない山道で、路肩の少し広がったところへ車を停めると、もう人二人が並んで歩くくらいの幅しかないような細さだった。

俺も何度かこの山には来たことがあるから、この道自体は知っていたけど・・・

なるほど、たしかにここから山に入っていった先に廃屋があるとすれば、こんな意味不明なところで道幅が広がっているのも納得できた。

 

「ここ。ほら、藪で隠れて見えなくなってるけど、階段があるだろ?」

A兄が鬱蒼と茂った草を掻き分けると、そこには無造作に石で組まれた階段・・・

どうやら、ここから山中へ上っていけるようだった。

こんなん、よく見つけたなと思いつつも俺たちは縦一列に並んで上り始めた。

当たり前だが夜で足元がわからず、懐中電灯の光で何とか目を凝らして進むため、廃屋までは案外時間がかかった。

A兄の話ではすぐに着くはずだったが・・・

 

30分弱ほど夜の山中を歩き、そろそろ息も上がってきた頃、A兄が立ち止まって指差した。

「あれだ。あそこのすこし開けたところ・・・見えねえか?」

見ると、たしかに林が切れた少し先に建物らしきものがある。

石垣に囲まれて、それは典型的な日本家屋のように見えた。

ようやく辿り着いた廃屋に近寄ってみると、そこは廃屋と言うよりは残骸に近く、中に入ることなんてとてもできないようなものだ。

いささか期待はずれの廃屋に落胆しつつも・・・

「なんでこんなところに一軒家が?」

という不思議な状況に興味をそそられた・・・

 

それと同時に、なにか異様な雰囲気が、この場を渦巻いているような気がした。

例えるなら、水の中に砂糖を溶かした時の陽炎のようにゆらゆらと糖分が溶け出す感じ?

透明の何かが蠢いているように思えた。

嫌な場所だな・・・

そう思いながらも辺りを見て回っていると、一緒に来ていた女の子が半泣きの声で一番近くにいた俺を呼んだ・・・

女の子が見ていたのは、家屋の正面、石垣のところにある表札だった。

 

名前は、木板が腐ってしまっていて読めないが、そんなことよりも背筋を寒くしたのは住所だった。

△△村○○ 1-1(番地は適当)

このように書かれているその△△の部分は、俺たちの市の名前だった。

しかし、問題なのは○○の部分・・・

懐中電灯に照らされたそこには『呪』とあった。

おいおい、やばいだろこれは・・・

 

そう思った俺はすぐにA兄に、ここは一体何なのか問いただした。

「この家なんなの?この辺って住所◇◇だろ?」

「呪なんて地名聞いたことないし、洒落になってねーよ」

俺に言われて、A兄は爺さんから聞いたという話を語り始めた。

 

以下、さすがに細かくは覚えてないので要約だけ書くと・・・

・この近辺はA兄の爺さんが子供だった頃(つまり昭和初期ごろ?)、ある一族が何世帯か住んでいた。

・その一族は何か独特の宗教のようなものを信じていて、その宗教の呪術の類を使って占いやお祓いなんかをしていた。

・しかしその一族の人間は次々に死んで、最後には誰もいなくなった。

・その一族の住居は大半は戦後の宅地開発で付近の道路や宅地に変わってしまったが、今でもこの山の中にいくつか残っているらしい。

というようなことだった・・・

 

最終的にA兄は・・・

「だから俺も、こんな気味悪い地名のことなんてわからん。」

「一昨日見つけた時はこんなとこまで見なかったからな。」

「帰ったらじいちゃんにでも聞いてみるか」

と言っていた。

 

「そうか・・・でも、なんかここやばいって・・・遊びで来ていいような場所じゃない気がする」

実は俺は雰囲気くらいでなら霊を感じられる程度の、ごく弱い霊感ならあるんだが、この場の雰囲気がどんどん気持ち悪くなっていっているような気がしていた。

俺は帰ろうと提案した・・・

しかし、AとA兄はせめてこの家を一周見て回ると聞き入れず、運転者のA兄がいなければ帰れない俺たちはしぶしぶそれに同意した。

そして、みんなでひと塊になるようにして、家の裏に回りこんだ瞬間、俺は全身の毛がぞくぞくぞくっと逆立つような感覚に襲われた?!

目の前には小さな濁った沼があった。

 

やばい!!

ここはやばい!!

空気だけで、明らかに危険な何かがいることがわかった。

どこからか・・・

「おおおおぉぉぉぉおぉぉ・・・」とか「ううぅぅぅぅ・・・」とかいった低い声も聞こえてくる。

「この沼、絶対にやばいって!ほら、帰ろう!!つーか、俺一人でも帰るからな!」

 

俺が余りにテンパるので、情けないことに一緒にいた女の子まで・・・

「大丈夫・・・?」

と俺を心配しだす始末・・・

でも、そこまでなってようやくAもA兄もわかってくれたのか、俺たちはすぐに山から降りて、A兄にそれぞれの家まで送ってもらった。

 

山から降りても、車に乗ってる最中も、ずっとさっきの声が聞こえていた。

苦しそうなうめき声とはちょっとちがう・・・

感情も何も感じない、ただ低い声・・・

俺はわざと大きな声で全然関係ない話を始めたりとかして、気を紛らわせた。

 

俺を家まで送って別れるときに、AとA兄は・・・

「お前は来ないだろうけど、俺たち今度もう一回あそこ行ってみるわ。」

「何か面白いものあるかもしれんし。」

などと言って笑っていた

俺はあそこはやめたほうがいいと再度、忠告したがそれでも結局、行くんだろうなとは思っていた。

Aたちの車を見送って、家に上がる。

声はまだ聞こえる

 

玄関を上がって居間に入ったところで、テレビを見ていた親父が振り返った。

「おー、遅かったな。縁日で何か食ってきただろ?」

「晩飯あんまり残ってないけど、食いたかったら冷蔵庫の中な」

「いや、いい。腹減ってないや」

そう俺が答えたところで親父は・・・

「そうか。じゃあちょっとこっちこい」

といわれ、そのまま親父は俺を生活に使ってる家の隣に建つ教会へと連れて行った。

 

大体、親父に教会の方へ連れて行かれるときは、大事な話があるときか説教されるときだった。

俺は何かやらかしたかなと心当たりを探りながらも、少し緊張しながら切り出した。

「それで、なに?何か話があるとか?」

俺が聞くと親父は並んだイスに座りながら、真剣な顔で言った。

「お前、縁日に行ったんじゃなかったのか?」

「いや・・・縁日行ったよ」

「じゃあ、それどこで拾ってきた」

「それ?・・・何が?」

「お前なら何も感じないはずがないだろう。どこか変なところに行ったんじゃないのか?」

この声のことか・・・

 

そう悟った俺は、縁日の後に行った廃屋のことを正直に話した。

たぶん怒られるだろうなと思っていたが、親父は俺の話を終始黙って聞き、俺が話し終わったあともしばらくは何も言わなかった。

「俺、何か憑かれてるの?悪霊(あくりょうではなく、キリスト教ではあくれいと読む)とか?」

「憑いてる。まあ、しょうもない霊はうちに入る前に逃げてくが、これは少しは根性あるかもな・・・」

「大丈夫なん?」

「声が聞こえるほかに、何かあるか?何か見えるとか、気分が悪いとか、どこか痛いとか?」

「いや、声だけ…」

「なら大したことない。ほら、祈るからこっち来い」

と言って親父は俺をそばに寄らせると、俺の頭に手を置いて祈り始めた。

 

最初は日本語で祈っていたが、途中から異言になった・・・

(いげん:聖霊を受けた人が語る言語)

その人の内の聖霊が語りだすらしい。

その言葉は本人にさえ何を言っているのかわからず、必ず本人が知らないどこかの国の言語か天使の言葉を話す。

親父の異言はなんか巻き舌っぽい発音だが、途中からそれに変わった。

 

さすがに聞きなれた親父の異言だけに、不思議な安心感が俺を包む。

祈りが終わったとき、ずっと聞こえていた声は消えていた。

「明日、その廃屋へ行った友達を全員連れて来い。他の子にも何か憑いてるかもしれん」

夏休みだったから、みんな集まれるはずだったので、俺は素直にそれを承諾した。

親父は特に、一緒に行った女友達のことを心配していた。

 

AやA兄のように、まったく怖がってない人間はそんなに危なくないらしい。

そういう態度が逆に霊のちょっかいを呼ぶこともあるそうだが、その程度で機嫌を損ねるような霊は小物だと言う。

そんな霊にはそれこそ幻聴や幻覚、悪夢、不安なんかを引き起こすくらいしかできないそうだ。

そういう意味で、怖かったであろう女友達のほうが心配だし、何より、女は男より霊的攻撃に晒されやすいらしい。

これは聖書の創世記で・・・

【サタンが善悪を知る木の実を食べさせるために騙したのがエヴァで、そのエヴァに勧められてアダムもそれを食べてしまう・・・】

というエピソードに象徴されているそうだ。

だから、男は女に弱く、女は悪魔に弱いそうだ・・・

 

俺は親父からそれを聞いて、さすがに女友達のことが心配になった。

しかし、思い返すにそんなに様子がおかしかった記憶はないから大丈夫なんじゃないか・・・

そんなふうに思っていた。

 

次の日、俺は昨晩廃屋にいった面子に事情を話して、教会に集まってもらった。

全員集まったので親父を呼びに行くと、すでに親父の表情が険しい

「悪霊がいる。お前は来なくていい。それから、一つだけ言っとく。怖がるな」

それだけ言うと、親父は教会の方へ向かっていった。

 

とりあえず居間で、何もせずにぼーっとしているとAとA兄、それから昨晩一緒に行ったBとC(Cは女の子)がすぐにやって来た。

「どうだった?」

俺が聞くとAがこわばった顔で・・・

「D(Dも女の子)に何か憑いてるらしい。俺たちも追い出された」

「Dちゃんが?昨日は何ともなさそうだったのに・・・」

俺が不思議がると、Cが涙目で言い出した。

「それなんだけど、何ともなさそうだったのが、今にしてみれば逆に変な気がしない?」

「Dって、結構怖がりだし、最初肝試しに反対してたのもDだった・・・」

「車の中でもずっと不安そうだったし・・・」

それを聞いて、俺はあの廃屋でのことを思い出した。

 

家の裏の沼で俺が立ちすくんだ時、俺を気遣ってくれたのはDだった。

『大丈夫…?』

そう言って、彼女は少し笑っていた

あの状況で、あのDが笑う・・・?

あの時、すでにDに悪霊が憑いていたとしたら・・・

俺は背筋が寒くなって・・・

「親父が怖がるなって言ってた。とりあえずあんまり考えるのやめにして待とうぜ」

みんな、そして半分以上は自分にそう言い聞かせて、親父とDが出てくるのを待った。

 

どれくらいの時間が経っただろう、気まずい沈黙が流れて、その気まずさも麻痺してきたころ、ようやく親父とDが居間に現れた。

「・・・もう大丈夫なの?」

みんなが二人に注目する中、親父が黙って頷いた。

「みんな、もうその廃屋へ行くのはやめとけ。」

「怖がる必要はないんだ、でも、わざわざ行くこともない。」

「ほら、防弾チョッキを持ってるからって、わざわざ自分で自分を撃ってみたりしないだろ?」

「それと同じだ・・・」

Dに憑いていたのが何だったのか、そういった説明は一切せずに親父はそれだけ言ってみんなを帰した。

たぶんDには直接、教会の中で何か話したんだと思う。

その件は、それで終わった。

 

その後、何かあったかというと拍子抜けするほどに何もない。

ただ、A兄が爺さんに、あの呪という地名のことだけは聞いたそうだ。

それによると当時、その一帯は呪(のろい)と呼ばれていたらしい

正式な住所・地名ではなく、通称のようなものだったらしいが・・・

そこに住んでいた一族は番地のようなものまで作り、それぞれの家に呪1-1のような感じで表札にしていという。

その一族が何で死んだのかとか、そういう核心の部分は全くわからない。

 

ちょうど昨日、この話を書こうと思って、久しぶりに親父と当時のことを話した。

その時の会話で印象深かったことを、最後に書いとくことにする。

「結局さ、Dちゃんに憑いてたのは何だったの?」

「んー、まあ悪霊だ。下っ端だけどな」

「悪霊って、あんな○○山なんかにいるもんなのか・・・」

「いるよ。至るところにいる。そして俺たちを地獄へ引きずり込もうと狙ってる」

「引きずり込む・・・つまり取り憑いて殺すってこと?」

「いや、そんな効率の悪いことはしない。そんなことしなくても、人間はいつか死ぬだろ?」

「放っておけば死ぬんだから、わざわざ殺す必要はない。」

「奴らにとって、よっぽど恐ろしい霊的権威をもった人間じゃなければな」

「じゃあ、どういうこと?」

「神から離反させることさ。そうすれば地獄へ落ちる」

「つまり、人間をたぶらかして罪を犯させるとか、そんな感じか」

「まあそれもあるが・・・なあ、悪魔がやるもっとも典型的で、それでいて現状もっとも成功している人間への最大の攻撃って何だかわかるか?」

「最大の攻撃?何?」

「悪魔なんて、霊なんていない。そう思わせることだ。そうすれば、人は神を信じない。」

「神から離れた人間ほど、狩りやすい獲物はないからな」

俺はそれを聞いてぞっとした。

 

そんな人間、今の世の中、腐るほどいるからだ。

「だから大事なのは霊の存在を否定することじゃない。」

「いないから怖くない、じゃなくて、いるけど怖くない。」

「そう思えるようになったら、お前も半人前くらいにはなるだろな。」

「まあ、別にお前に牧師を継げなんて言うつもりはないけどな」

以上が俺の体験です

 

心霊現象としては、大したことは起こってないし、肝心のその一族に関することはほとんど分からずじまいでした。

ここ見てる人の近所に、呪って地名があったりしたら面白いんだけど・・・

どうだろう?

『悪魔の最大の目的』【怖い話シリーズ7】

怖異 恐子
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