とある小学生が体験した怖ろしい話・・・
『カキタ様』
家庭の事情で田舎で祖父と暮らしていた頃の話・・・
そこには絶対に遊んじゃいけないと言われた場所があった・・・
「カキタ様にさらわれるって、爺ぃちゃが・・・」
今回は怖ろしい怪談話『カキタ様』をお伝えします。
毎度おなじみ心霊界の石原さとみこと、コワイキョウコです・・・
今回も地方伝承系怖い話です・・・
神様なのか、物の怪なのか・・・
小学生の身に起こった災いの正体は一体、なんだったんでしょうねぇ(汗)
それでは怖い怖い怪談話・・・
『カキタ様』
どうぞお楽しみください・・・
※このお話は5分ほどで読むことができます。
『カキタ様』怖い話シリーズ156
俺、家庭がごたごたしていた事が以前あってさ。
それが理由で学校とか行きづらくなっちゃって。
友達とかは「気にすんなよ、一緒に遊ぼうぜ」とか言ってくれるんだけど・・・
その友達の親とかは俺を腫れ物みたいに扱ってさ。
何かと辛い時期があったワケ。
それを不憫に感じた爺ちゃんが・・・
「落ち着くまで俺の所にこい。学校も一時的にこっちに移せ」
とか言って、けっこう遠い田舎へ招待してくれたんだ。
そこの田舎、いわゆる過疎地で1学級が20人足らずの小規模な土地だったんだ。
俺はそこでも友人に恵まれて、新しく出来た友達と一緒に野山を駆け巡ってた。
田舎の子供ってほんとパワフルで色々な畦道を遊び場にするんだけれど、なぜかそいつらが絶対に遊ばない場所が一箇所だけあったんだ。
そこは神社の鳥居前。
少し薄暗い林の中に建っている神社で、その前に大きい鳥居があったんだ。
『だるまさんが転んだ』とか『かくれんぼ』とかに使えそうな場所だったのに、何故か友人たちは露骨にそこを避けるんだよ。
で、ちょっと気になって理由を聞いてみたら・・・
「遊んじゃいけない」と、大人が再三注意を促していた場所だったかららしい。
でもそこは注意を促すにしては、それほど危険な感じはしなかった。
充分開けた場所だったし、周りに車が来る気配すら感じない。
妙な不自然さを子供心に感じたから、もう少し突っ込んで話を聞いてみると・・・
「カキタ様にさらわれるって、爺ぃちゃが言った」
って低学年の子が教えてくれたんだ。
子どもの頃の記憶はうろ覚えだけど、その「カキタ様」という響きは妙に頭に残っている。
当時ガキ大将気質だった俺は、何というか『大人のルールに逆らう俺カコイイ!』みたいな中二病チックと言うかアホと言うか、そんな感じだったので、遊ぶことが禁止されている地に踏み込むことに妙な憧れを持ってしまった。
で、休みの日に何人か集めて鳥居の前で遊んでみることにしたんだ。
集まったのは、俺を含む6人の男子。
いざ鳥居の前に集まったら、俺以外の男子は「ここで遊ぶの止めようぜ」と腰が引け気味だった。
それを見て俺は・・・
「何怖がってるんだよ、カキタ様とか信じるなんてガキみたいな事言ってんじゃねぇよwww」
とか、そんな感じの怖いモノ知らずな発言を皆に訴えていた。
それを聞いて他の友人たちは・・・
「俺はガキじゃない! いいぜ、遊ぼうや!!」
みたいな売り言葉に買い言葉で遊びを承諾。
そして、その鳥居の前で遊ぶことになったんだ。
でも鳥居の前で遊ぶといっても、遊び方は制限される。
結局、その地域では『けいどろ』と呼ばれる鬼ごっこで遊ぶことになった。
『けいどろ』は平たく言えば鬼ごっこで、警察(鬼)役と泥棒役に分かれて遊ぶものだ。
警察は泥棒を捕まえて、一箇所に固める。
泥棒は捕まっている仲間の誰かにタッチしたら全員逃げられる。
所定時間までに泥棒が一人でも生きている状態か、もしくは警察が泥棒役を全員捕まえるかで勝負は決着。
で、捕まえた泥棒役を集める場所が鳥居前になった。
それからゲームが始まって、凄く楽しい時間が過ぎていった。
…ただ一つ気になるのは、泥棒役で鳥居前に捕まった際、妙な寒気を感じた事。
うだるような炎天下で追いかけっこをしていたのに、その鳥居前でジッとしているだけで妙な冷ややかさを感じた。
それから昼食を取るのを忘れてずっと遊んでいると、気づけば夕暮れ前になっていた。
今になって知ったけれど、あの頃合って「黄昏時」っていう言葉で表せたんだな。
どのくらいの夕暮れだったかと言うと、夕焼け空が真っ赤になって、みんなの顔が徐々に見えづらくなっていたくらい。
田舎の空って街に比べて、深い色合いを出すもんなんだと幼心に思ったよ。
「七つの子」のチャイムも鳴って、そろそろ解散の時間帯。
でも遊び足りない俺たちは、最後に『だるまさんがころんだ』で〆ようという事にしたんだ。
とりあえず『だるまさんがころんだ』を三回やって、それで今日は終わりね、っていう事を取り決めて、その日最後の遊びが始まった。
みんな暴れまくってテンションも高かった。
何より「夕暮れ前」っていう独特の時間帯に、大人数で遊んでいるという事が特別に思えて楽しかったんだ。
一回目。
鬼は友人の一人。
「だーるーまさーんがー、こーろんだ!」
という声が境内に響く。
俺たちはギャーギャー言いながらも遊び騒いでいた。
ただ、変な違和感を俺はそのとき感じていたんだ。
なんていうのか形容しづらいけれど、こう、『一つだけ異物が交じってる』みたいな場の雰囲気。
間違い探しの絵を最初に見たときの違和感みたいな、なんとも言えないものを感じてた。
で、二回目。
鬼は再びさっきと同じ友人。
「だーるまさんが! ころんだ!!」
という早口でまくし立てる声を聞いて、「おい、早えーよwwww」とみんなで笑いあってた。
結局、あのときに感じていた違和感は今でもよく分からない。
でも…言葉にできない不気味さというのが、あの場には確かにあったんだ。
どうにも妙な空気が落ち着かない俺は、「ころんだ!」と鬼が言った状態から、いの一番に動いてしまった。
最後の鬼は俺に決まった。
そして最後の三回目。
鬼は俺。
さっきから何度も繰り返している『妙な雰囲気』は置いといて、俺はただ純粋に(もっと長く遊んでいたい)と思っていた。
だから、「だ~~る~~ま~~さ~~んが~~!」とわざと声の調子を間延びさせて、一秒でも長く楽しい時間が続けばいいなと、子どもながらに時間に抵抗していたんだ。
そして、ゲームを楽しめるためにわざと早口で。
「ころんだ!」
そう言って振り返ってみると、友人五人が変な格好で止まっていた。
ただ、もう夕暮れから夜へと以降を始めた時間だから、皆の表情は確認できなかったけれど。
列の一番後ろにいた友人が、何故か顔を歪めていたような気がした。
そして、また俺は鳥居に顔を伏せて数を数える。
次はさっきの間延びした分を取り戻すような早口で。
「だるまさんがころんだ!」
そう言って振り返ると――
一番後ろにいた友人の姿が消えていた。
本当に一瞬の事だった。
ここは見晴らしの良い場所で、辺り一面を見渡せる程度の広さがある。
なのに、たった数秒で忽然と姿が消えるのはおかしい。
「おい、○○君どこいった!?」
と俺がみんなに言うと・・・
「あれ? あいつどこ行った?」
「帰ったんじゃね?」
「いやいや、俺らと一緒にさっきまで遊んでたろ?」
みたいな事を言い出す始末。
妙な薄ら寒さを感じたから、その日はそれで解散。
目の前から姿を消した友人は、「もう帰ったんだろう」という事で一旦落ち着いた。
「明日学校で会ったら、なんで急に帰ったか聞こう」と残った皆で言い合って、その鳥居前を後にした。
その日の夕食後。
なんか玄関前が騒がしいから、俺もなんとなくそっちへ向かったら、消えた○○君のお母さんが狼狽した様子で爺ちゃんに訊ねていた。
「うちの息子、知りませんか?」
帰っていなかった。
○○君は家にも帰らず、本当に目の前から消えた。
「ああ、たっくん(俺)。うちの息子と今日遊んだよね?あの子がどこに行ったのか知らない?」
そう聞かれて、俺は咄嗟に「し、知らない」と言ってしまった。
なぜそう言ったのは分からないけれど、なんとなく怒られるような予感がしたからだろう。
それからしばらくして、○○君のお母さんは爺ちゃん家を後にした。
取り残された俺と爺ちゃん。
リビングに向かう最中。
爺ちゃんが、俺にポツリと話す。
「正直に言ってみれ。…今日、どこで遊んだ?」
もう観念するしかない。
俺は本当の事を話した。
「じ、神社の前の鳥居で、○○君たちと遊んだ…」
それを聞いた爺ちゃん、目をカッと開いて俺に怒鳴った。
「馬鹿ったれ! あの場所じゃ遊ぶなって大人から言われんかったか!?」
普段は優しい爺ちゃんだったから、怒られた事がショックで俺は大泣き。
でも爺ちゃんはそんなこと意に介さないように、急いでリビングに向かって色んな人に電話し始めた。
どんな内容の電話だったのかは流石に分からないけれど、そこから聞こえてきた、たった一つの単語だけは覚えている。
「カキタ様」、と。
そこから爺ちゃんは慌しく、どこかへ出かける準備を始める。
どこに向かうのか聞いたら、公民館で集会があるという事らしい。
「いいか、爺ちゃん帰ってくるまで、絶対に鍵を開けちゃいかんぞ」
と何度も俺に伝えて、爺ちゃんは家を後にした。
今となっては、○○君に関する村の緊急集会だったのだろうと思う。
そして結局、その日に爺ちゃんは帰って来なかった。
その晩に一つだけ不思議な事があったのは、風もない寝苦しい夜だったのに、妙に玄関のドアがガチャガチャと音を立てていたくらいだ。
次の日には全校朝会。
名前はぼかしていたが、○○君の事に関してだった。
「あまり遅くまで遊ばないように」という校長からの釘刺しで朝会は終了。
教室では昨日遊んだ面子で、消えた○○君の安否を気にしていた。
結論から言うと、○○君は数日後に保護された。
どこで見つかったのかと言うと、隣の県にある峠の中腹だった。
トラック運転手が夜中に峠を走っていると、道のド真ん中で泣いている子どもを保護したらしい。
その保護された子どもが○○君だったワケだ。
…俺たちが遊んでいたあの場所から、100kmは下らない場所まで、どのようにして行ったんだろうか。
しかも発見されたときの○○君は、擦り傷などの怪我もなく、どこもボロボロになった様子は無かったようで。
小学生が徒歩で歩くには、あまりにも厳しすぎる距離を移動したのにも関わらず、不思議なほど小ぎれいな状態で発見されていた。
あれから随分と年も経ち、俺も大学生となった。
数年前に爺ちゃんが他界したとき、久しぶりに懐かしの土地へ向かってみた。
幾分か土地開発は進んでいたものの、昔遊んだ場所は変わらずあのままだ。
葬式が終わったあとの時間を使って、例の『鳥居前』へと足を運んでみた。
あの思い出のままの姿で俺を迎えてくれた鳥居は、何も語らずにただ悠々と建っている。
今でもこの鳥居前で、子どもは遊んでいないのだろうか。
あの時の○○君のような事件が、実はまだこの地で起こっているんじゃないのだろうか。
今でも、「カキタ様」の真実を俺は知らない。
『カキタ様』怖い話シリーズ156
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