怖い話風のホッコリする話・・・
『落ち武者に剣道を教わった話』
落ち武者の霊が現れると言う、いわく付きのマンション・・・
ある中学生が友人と共にそのマンションに足を踏み入れると・・・
落ち武者がいた・・・超優しげな・・・
今回は世にも恐ろしい怪談(風のホッコリする)話『落ち武者に剣道を教わった話』をお伝えします。
毎度おなじみ心霊界の石原さとみこと、コワイキョウコです・・・
今回はちょっと面白い話を見つけたのでは、紹介してみます。
怖い話・・・と思ったら・・・(汗)
それでは怖い怖い怪談(風のホッコリする)話・・・
『落ち武者に剣道を教わった話』
どうぞお楽しみください・・・
※このお話は10分ほどで読むことができます。
『落ち武者に剣道を教わった話』怖い話シリーズ38
今から8年前。
ちょうど10月。
俺がまだ厨房だった頃の話。
当時の俺は俗に言うDQNで学校なんかロクに行かない様なガキだった。
この時期になると、どの学校も体育の時間は剣道か柔道か選択して授業を受けると思う。
そこで腕っぷしの立つ頭格の奴らが『体育受けに行くぞ!』ってなったんだ。
不良言っても運動神経良い奴とか、マジで滅茶苦茶に強い奴とか、そんな奴らばかりだし体育教師とは友達状態だから割とどの学校でもよくあると思うけど。
俺らは「竹刀とかカッケェwww」と言う理由で剣道の授業を受けに行った。
・・・と思ったら、俺ともう一人(A)以外は柔道に行ってた。
俗に言うハメられたのである。
Aと俺は柔道の方に行かせろと教師に言ったが聞く耳は持ってもらえず、仕方なくその日は剣道を受けることになった。
そして俺はであった。
奴と。
二学期の初めに身長160ぐらいの転入生がきていたのは知っていた。
そいつが剣道の授業を選択していたんだ。
噂通りのイケメンだった。
身長160ぐらいでイケメンって言うのは変だけど、見るからに頭がキレそうな奴だった。(名称B)
そいつは、なんか左右に竹刀を振る稽古の時に一緒になったのだが、その時俺の顔を見るなり露骨に嫌な顔をした。
俺「なんだよテメェ?」
B「なんでもないけど、早くしろよ」
俺「ああ゛?」
B「はぁ・・・、これだから馬鹿は・・・」
そこでは教師が慌てて来て何もなかったのだが、無性に腹が立ったのを覚えている。
そしていよいよ。
剣道の最期に試合があり、何だかんだで俺はワクワクしていた。
剣道を選択した奴らを偶数奇数で2つの班に分けて試合をするのだが、俺の対戦相手はBだった。
心の中で小さくガッツポーズをした。
ドガドガと大股で入る俺に、ススッと静かに入るB。
ただの自意識過剰だと思うけど、妙に周りが注目していたと思う。
試合ルールは一分間、2本取るか、時間切れで判定(どっちが強かったか皆で拍手して決める、はずいヤツ)。
俺は絶対にコイツを叩き飛ばしてやるとヤル気十二分で挑んだ。
一本目が始まる。
教「始め!」
その声と同時に俺の頭にとんでもないぐらいの衝撃を感じた。
Bが居た。
飛び込んできたのである。
余裕で一本取られた。
俺「はぁ!?今の有なのかよ!」
教「うん」
俺「クッソ!じゃあ俺もやるわ!!!」
二本目が始まる。
教「始め!」
その声と同時に大振りで飛び込む俺。
胴にとてつもない衝撃が走り、Bが横に居た。
多分、剣道経験者の人だと分かるけど、踏み込みが早い奴はそんな感じで速攻だわ。
その時、柔道サイドに居た仲間たちが超ゲラゲラと笑ってた。
ちなみに柔道再度は喧嘩殺法で余裕で勝っていたらしい。
Aは「ドンマイドンマイ!かっこよかったよ!」と腹抱えて笑ってた。
売った喧嘩は負けなしだっただけに、とんでもなくショックを受けていた。
「よりにもよってあんな野郎に!?はぁ!?」って感じ。
とにかく悔しかった。
その日、イライラして授業を受ける気にもならず早々に学校を抜け出す。
他の奴らは俺が負けた件でおちょくってくるので相手したくなかった。
夜中にAからメールが来て「ボロ負けしたオレさんチーッスwwwww」って来た。
ちなみに2ちゃんねらーなのは、その頃からである。
A曰く、Bは元々別の学校で剣道部で主将クラスだったらしい。
中学生にして初段だか2段だか持っているレベルだったそうだ。
勝ち目がないのは目に見えていたような物である。
そもそも教師は俺ら不良が試合をするときは、直に止められる距離とかに来るのに来ない時点でおかしかったのを理解するべきだった。
ただ、それで気持ちが納得することはなかった。
なんか無性に腹がだって、適当に金属バット持って家の前で振り回してた。剣道のつもりで。
翌日、必死にイメージトレーニングして無駄な自信を持った俺。
Aは俺と一緒に学校を訪れ、そのままBのクラスに突入。
B「なに?負け犬」
俺「ああ゛!?ふざけ(ry」
今考えると行き成りドア開けて入って来て、なにがフザケルナだよ。
俺「とにかく、今日の体育絶対でろよ!!」
B「はぁ?お前らと違って普通に授業うけているから出るに決まってるだろぉ?」
A「俺さん煽られてるwwwwwww」
こんな感じで宣戦布告した。
結果は惨敗であった。
ちなみにAとは幼馴染。
幼稚園からクラスまで変わらないと言う妙な仲だ。
どんな馬鹿なことにも付き合ってくれて今でも良い友である。
A「ドンマイドンマイwwwwwwwww恥ずかしいwwwwwwwwwwwwwwww」
超煽るA。
俺「ああああああああああああ!」
よく分からない奇声をあげている俺。
こんな感じで忍び込んだ屋上で騒いでた。
A「ウッヘwwwウッウッwwww」
俺「アアアアア……」
笑いすぎて過呼吸になるAと、恥ずかしすぎて苦しい俺。
なぜ挑んだのだろうと、多分喧嘩して人生で初めて後悔した瞬間だと思う。
いや喧嘩じゃないよな。
とにかくそんな状態じゃ、不良グループに戻る事もできないし、寧ろ戻ったら絶対に馬鹿にされる。
それは何とも言えないほど嫌だった。
A「でwwどうするッスwww」
俺「喧嘩なら勝てる」
A「いやwww見切られてバシューンよwww」
俺「ありえる」
A「wwwwwwwwwwwwwwwwww」
今でも思い出すと恥ずかしい。
そこでAが俺に話した。
A「そう言えばさwwwwTマンションに落ち武者出るらしいぜwwww」
それが俺のBとの因縁を大きく突き動かした。
そのマンションと言うのがバブルの時に建造したけど、通行の不便さとか、そもそも何でこんな田舎に。
って感じの意味不明マンションで、自殺者が相次いだとか、自殺志願者が集まるとかで、ありがちな心霊スポット。
荒れ放題で夜中に何度か肝試しで訪れたことあるけど、ラクガキとエロ本だけしかない場所だ。
俺「Tマンションってあの?」
A「そうそうww○○ちゃん(ビッチギャル)が見たんだってww」
当時の俺はどうしてそれを選んだのか分からないが。
とにかくBに勝ちたいと言う気持ちが強く。
俺「その落ち武者に修行してもらってくるわ」
そう全力、ドヤ顔で言った。
やべぇ、これもなんか恥ずかしい
他校まで知れ渡ってしまった不名誉である。
ただ殴り合いなら負けなかった。
何故か。
それは本当。
そうして夜中、Aと一緒にTマンションに訪れた。
俺の装備は、まんじゅうと線香、あと仏壇にあった位牌を何故かもち。
Aの装備は、インスタントカメラと、実家のお札。
とにかく訳の分からない装備でTマンションに訪れた。
当時は大真面目だった。
A「女ときてぇー」
俺「俺だってきてーよ……」
そんな感じで会話しながら落ち武者を探した。
何故か外れているドアと、動物の足音と、テントや寝袋が散乱している部屋。
七輪・・・ではなく焼き肉プレートがあったり、コンドームとか、キ○ィ人形とか、古いラジカセとか。
思い返せば拍子抜けする廃墟だと覚えてる。
俺「どこで落ち武者出たんだよww」
A「知るかよwwwおっかねーぞここww」
でも当時はビビってた。割と真面目におっかなく、コウモリが出た時は二人でガチ悲鳴あげた。
そんなこんないあって、最上階辺りまで来た。
時刻は深夜二時。大体二時間ぐらい探索していたと思う。
ガチャガチャ・・・
背後で薄い金具が何枚もぶつかっているような音がした。
最初は缶だろうとか思っていた。
A「なあ、缶の音聞こえるよな?」
俺「うん」
A「近づいて来てね?」
俺「思ってたわ・・・」
どうやらその音は俺らが歩いた場所を見て周っている様だった。
カチャチャン、カチャチャンっとよく音が響いていた。
段々と瞼が重くなるような。肌が痛くなるような。
寒くて耳が痛くなるような感覚がし始め、鳥肌たち、背中がゾクゾクとする。
何故か頭の中では俺らの背後に、髑髏で剣道の防具を来た幽霊が立っているようなイメージが浮かび。
A「わっり、俺マジで逃げるわっ!」
そう言うとAはもの凄い早さで階段まで走って行く。
俺「ちょちょちょ! まて!」
ビビリながらその背後を追う俺。逃げ出した。
三階まで駆け下りたところで、俺はガチコケした。
それはかなり全力なコケかたで、階段で2回ぐらい前転しながら落ちた。
Aの微かに笑っている声が聞こえたけど、Aは逃げているのかドンドン声が聞こえなくなって言った。
俺は真面目に痛くてその場に座り込んでいた。
カチャチャン。
音がする。
間違いなくガチャガチャとも階段を下りている鉄の塊が居るのを感じた。
俺(まじでまじで!?)
情けない事に腰が抜けて動かない。
もしかしたら金縛りかもしれないけど。
そうこうしているうちに、俺が見ていた階段に奴が現れた。
見るからに武者。
綺麗でカッコイイと思える、子供の日に見る様な甲冑を来た美男。
眉毛はシャッとしていて、顔もスッとしていて、目は細いながらも力強い。
最初はコスプレしている人かと思ったけど、その姿が微かに透明なのを見て「落ち武者だ!」って分かった。
透明なのに気が付いた瞬間、だんだんと怖くなり持ってきていた位牌を取りだし見せつけた。
武者の男は「( ゚д゚ )!?」って表情になったのち、優しい顔をしてクスッと笑った。
恐らく今だから分かるけど、俺も位牌を見せられたらびっくりする。
俺「ここ、これ饅頭です。線香です」
武者(それを目で見て、またクスッと笑う)
俺「ご、ごめんなさい!すみません!」
武者(ゆっくりと階段を降りはじめる)
ゆっくりと降りてきた武者は俺の前に立つと、ゆっくりと屈み俺の顔を見た。
ビビって声が出なかったけど、武者が「別に鬼でもない。安心しろ」と言っているような気がした。
テレパシーって奴なのかな。
とにかく頭の中で声が聞こえる感じ。
武者(饅頭へ手を伸ばす。親指と人差し指でつかむ)
その瞬間ズズッと腕の皮が引っ張られるような感覚がして、まんじゅうから白い粒が抜けた。
その光の粒を武者は食べると、ニコッと笑った。
武者さんを見ていたら気持ちがだんだんと落ち着いてきて、俺の本題を思い出した。
俺「そ、そうだ!剣術を教えてもらいたいのです!」
慌てて正座し、土下座する俺。
武者(もの凄く動揺、大きく後ろに下がる)
俺「剣道で負けて悔しくて!本物武士なら強くなれると思いました!」
武者(手を出して、一生懸命顔をあげろのジェスチャー)
俺「いいですか!?」←馬鹿である。
馬鹿だけど、何故か了承してもらえた気がしてテンションが上がった。
武者(両腕を組み、まっすぐに俺を見る)
俺(ガン付ける様に見る)
そんな感じで本気で1分以上続けて。
俺「あ、酒ですね!明日持ってきます、だから教えて下さ!」
そう言う結論に至って再びの土下座。
武者(また顔をあげろのジェスチャー)
(これの繰り返しなので省略する。)
その日は妙に気分ウキウキで家まで帰った。
Aからメールが何通も来ていて来ていて10通目あたりで「死んだ?」で、20通目辺りで「ごめん」って来てた。
俺『武者に許可貰った!!!』
A『は?』
俺『明日から修行する!じゃ!』
A「は?」
次の日、学校の忍び込んで竹刀を2本かっぱらった。
そこから一端家まで戻り、親父の日本酒(一升瓶)を手に持ってマンションへ。
そこからジーッと武者が来るのを待った。
途中怠けて他にも持ってきていた漫画本やPSPをして時間を潰した。
俺の待機場所は屋上。武士と言ったらここに来るだろうと妙な自信を持ってた。
夜中5時頃。
町内の帰りの歌が流れだした頃。
ガチャン、カチャカチャ。
あの音が聞こえてきた。
俺は直にゲームとかPSPをしまい、持ってきておいたコップに酒を注いで正座した。
武者が階段から出てくる。
すごく驚いた顔をした。
多分内心(うわぁ、本当に来たよ・・・)だったと思う。
俺「師匠!宜しくお願いします!」
叫ぶように言った。
武者さんは困った顔をしながらも俺の前に立った。
それから武者さんと秘密の修行が始まった。
最初は持ってきておいた竹刀を武者さんに渡すと、首を振られ断られた。
と言うのも、竹刀を持つ事ができなくて通り抜けちゃうのだと、実演して見せられた。
なので武者さんは脇に差していた刀を一息で抜刀。
俺は「うぉおおおお!!カッケぇ!!」とか言ったら、照れ臭そうに笑ってた。
主な教え方は武者さんが刀の持ち方や構えからを実演して見せて、顎で「さあやれ」と言われて真似するだけだった。
それで始めの一週間はとにかく竹刀の持ち方と腰の入れ方をおしえられた。
最初、尻が出ていたのだけど、その時に武者さんが寄って来て腰の辺りをパンッて叩いた。
実際には叩かれた衝撃はないのだけど、胃の中に急に冷たい物が現れる様な、
そんな妙な感覚がしてヒッと腰を前に出す感じ。
あと、何度も握り方を見せられた。
要は絞る様に握り、腕は微かに曲げろとの事。
脚に関してはそんなに言われなかったけど、飛び込みの時はもっと体を屈めろと何度も見せられた。
基本的には同じ動作の繰り返しで、俺がそれをしている間は、コップに注がれた酒を武者さんは黙って飲んでいた。
その間も眉一つ動かさず、ジッと俺を睨む様に見ていたのを覚えている。
ちなみに休憩は無かった。だから2週間ぐらいは筋肉痛と疲労で、Aとも遊ぶ気にならなかった。
そう言えば不思議なことにお酒を注いである筈のコップが毎回、終る頃には空になってた。
武者さんが飲んでいたのだと思うけど。
そんなこんなで夕方5時から、夜の10時ぐらいまで。
今考えるとよくぶっ通しで出来たなーって思う。
一度だけ怖かったのが。
二週間目あたりで俺が「実践を教えろ!」と駄々をこねた時だ。
武者さんは大きく息を吐くと、立ち上がり、そこに立てと刀で指した。
俺はワクワクしながらそこに立つと、向かい側に武者さんが立つ。
瞬間、いまでも経験したことがないけど、とてつもないオーラを感じた。
不良同士の喧嘩で、頭格が発しているような、とにかく近寄っちゃけない感じ。
で、ババッと走ってきたかと思ったら俺の首元寸前で刀が止まっていた。
何て言うか飛び込んだわけでもないのだけど、本当に瞬時に接近してきた。
俺はビビリながら泣くと、すまんすまんと武者は慌てた様子でオドオドしてた。
ただ只者ではないと確信を得た俺は、真面目に武者さんの修行を聞くことにした。
11月。
雪が降り始めても、必ず武者さんは屋上で待っていてくれた。
その頃になると武者さんが何度か、ビシッ!ビシッ!と刀を前後に振っていた。
とにかくキレッキレッだった。
しかも、それをした後、一息つく。
と思った瞬間、居合切りの様な速さで刀を抜刀。
瞬時に前後を切り、刀をしまう。
これを5秒ぐらいでやってた。
刀は見えなかったけど、明らかに抜いていたと思う。
俺は相変わらず竹刀を振って、時々武者さんが目の前に立ち、指さした箇所を叩く練習をしていた。
例えば、武者さんが肩を指さしたら肩を狙って竹刀を振る。
ズンッと俺は振っていたのを見た武者さんが見る
俺の横に立って刀をストンッと落とす様に真っ直ぐ切るのを見せる。
こうやれと武者さんは言っている。
それを何度も繰り返す感じ。
ちなみに構え稽古(オレ命名)で、武者さんがゆっくりと刀を振るのだけど、それをどう避けるの修行が辛かった。
そう避けると腕出ちゃうよ。
そう避けると肩でちゃうよ。
そう避けると顔危ないよ。
ほら腰出てる。
尻どうにかしろ。
どう避けても何かしらミスる。
俺「師匠の様にできないですよ!」
武者(楽しそうに笑っている)
11月からは比較的楽しくなってきた。
12月始め。
A『お前一か月も引き籠ってるけど平気?』
俺『修行している』
A『ああ、マジでやってるのか……(笑)』
俺『Bに勝ちたい』
Aには修行していることを内緒にしておいてくれと10月の時点で言っていたけど・・・
どうやらA自身も忘れていたらしい。
それと俺がBに惨敗したから顔が出せなくなったともっぱらの噂。
ますます悔しくなる。
A『でも、体育での剣道も終わってるし、もう直ぐ終業式だぞ?』
俺「あ・・・」
そうなんです、馬鹿なのです。
俺は。
その日、武者さんへ修業後話した。
俺「明日、試合して来ようと思います!」
武者さんは黙って俺を見る。
俺「勝ってきます!」
武者(深く頷く。)
そうすると武者さんは笑い、俺の頭を撫でてくれた。
すごくヒンヤリとした。
まあ分かると思うが当日。
Bが入部した剣道部に放課後訪れた。
最初顧問のBBAに一方的に「お前が来るような場所じゃねーだろ、帰れ」と言われたが、静かに「Bと試合だけしたら帰ります」と言い返した。
B「お前、またやるの?ww」
俺「うるせー!黙って勝負しろ!」
(省略)
負けました。
負けました。
顔が熱くなってきた
ただ、Bの得意技なのか分からないけど、飛び込みは完全に避けれたし、何回か鍔迫り合い(?)ってものになった。
それに明らかに竹刀を打ち込めていた。大きな成長を感じながら、武者さんの元へ戻った。
俺「負けました!」
武者(だろうな、と言った様子。)
俺「でも絶対勝てます、この調子だと!」
武者(笑う。)
とりあえず、25日からは来れなくなると言うことだけを伝え(家族や遊びたいし)、それまでの間は全力で修業した。
持ってくるお酒を3000円代にランクアップさせた。
武者さんが飲むのを静かに見ていたら「おっ」と言う顔をしていた。
年末。
深夜11時で賑わいある町の中、俺とAはあの廃墟へ。
屋上につくと、武者さんが正座して静かに日が昇る方の山を見ていた。
残念ながらAには見えていないらしいが、俺は「そこにいる!いる!」と一人で大興奮。
と言うのも、Aと遊んでいて連日の様に「嘘だろー」と馬鹿にされ続けていたからだ。
俺「師匠~!」
そう言いながら一升瓶を持って行く俺。
武者「Σ(´∀`;)」
そう驚いていたのもつかの間で、武者さんは直にコップの酒を飲むといつもの微笑。
俺とAはバカ騒ぎしながら飲んで騒いでた。
Aは未だに俺がボケてただけだと思っているらしい。
そんな感じで、マンションの屋上で騒ぎながら初日の出を迎えた。
一生大切な想いでとなった。
武者さんは凄くかっこよく、初日の出が似合っていた。
5日から修行を再開し、次の再戦を2月と決めた俺は一生懸命修行した。
武者さんも教えてくれるものが実践的な物になっていき、打ちながら下がる技や、斬り抜けとか。
色々見せてくれるようになった。
俺は1割ぐらいしかできなかったけど。
それで見ていて分かったのが、本当に武者さんは強い。
あと、若干俺がイメージしていた剣道と動きが違かった。
何度か面と面を合わせて黙ってこちらから攻め込む修行をしたが全部避けられていた。
で何度も俺の背中とかお腹とか打ち込まれた。
ヒンヤリとした感触しかしないけど「斬られた!」って言う感触だけは確りしていた
そして、自分が中々納得できず二月下旬になってしまった。
俺「師匠!今度こそ勝ってきます!」
武者(ニコニコと笑う。)
俺「うおおおおお!」
武者(腰の紐を締め、忘れるなよ、ッと言った顔で見る。)
つまり気を抜くなよって事だろう。
なんだか師匠に認められた気がして嬉しかった。
そうして俺は意気揚々と放課後の剣道部へと訪れた。
相変わらず顧問のBBAは俺の事を止めるが、前回と同じような流れでBを呼ぶ。
B「不良だから闇討ちとかしてくると思ったけど、してこないし。てっきり根性なしなのかと思ってた」みたいなこと言われ、ヒートアップする俺。
ただ冷静にと言うのが、武者さんを見ていたら大切だと分っていた。
武者さんを真似する訳じゃないけど、冷静にフッと鼻で笑い。
俺「正々堂々喧嘩売ってるんだよ。買えよ」
と喧嘩腰で行ってしまった。恐らく俺は武者さんの冷静さを理解できていないと思う。
B「うっせーよ。先生、さっさと終わらせますので」
妙にBは気取った様子で俺との試合を承諾してくれた。
おそらく、顧問もBも何かノリノリになっていたんだと思う。
ただ今回は少し変わっていた。
B「お前防具の付け方もしらないのかよ。コッチこい」
そう言うとBは俺の防具を着つく縛り直してくれた。
俺「お、おう……」
動揺しながらBを見るがやっぱ憎たらしいイケメン顔が面の向こうにある。
なんか無駄に盛り上がりを見せていて、隣の柔道部や剣道部の奴らが全員コッチを見ていた。
そうしながら試合へと向かう。
互いに礼をし試合場へと向かう。
不思議だったのが、Bは竹刀をスッと上に抜く様にして面に構えたけど、俺は竹刀を下に抜くようにしながら構えた。
なんか、それが独特の雰囲気だったのか、少し周りが「おお・・・」と声が上がった
顧問「始め!」
大きな声でBBA言った。
Bはまっすぐに俺へ飛び込んできた。
反射的に体が横へとずれる。
Bの竹刀は空を斬たが、直に降り向き俺へと来る。
俺の足取りは滅茶苦茶だったが、飛んできた竹刀を、自分の竹刀で受け止める事に成功した。
また歓声が沸いた。
俺は直に体をひきながらBの手を狙う。
ぶつかり合っていた竹刀を綺麗にクルりと回し、Bのコテを狙うが、バチンっと!引き下がりながらBがそれを阻止した。
その後は、何度も隙を見つけては竹刀を振った。
肩とかも狙ってしまったが、一本にはならず、とにかくスキがある所に叩き込んだ。
そう書くと、俺がメチャクチャ打っているようにみえるけど、実際はBの方が素早く打ち込んできた。
鍔迫り合いで容赦なく俺を押し飛ばし竹刀を振ってきた。
とにかく早かった。
何度もBと目が合う。
Bは真剣な表情だ。
ちょっと昔なら笑っていたかもしれないけど、その時は笑うことなく、真剣に睨み返してやった。
互いに何度も距離を取り、Bが攻め込み、それを俺が避けて、俺が攻撃するが、Bには届かず。
一瞬の隙をつく俺の攻撃は、Bの技量で逃げられ。俺は直に距離をとる。
とにかく終わりがない攻防戦だった。
そんな中、滅茶苦茶な足取りがあだとなった。
そもそも修行の時に袴を着ていなかったのが問題だった。
一瞬転んでしまったのである。
そこに容赦なくBが竹刀を振る様子が、信じられないほどスローモーションで見えた。
「馬鹿者!諦めるな!」
本当にそう言う男の声が聞こえた。
俺はハッとして、駄目元で竹刀で攻撃を防ぐ。
そのまま、妙な硬直状態となり顧問が「待て」と声が掛かり、俺は急いで立ち上がり、Bと面向かう。
あのまま転んだ状態で責められて居たら・・・と思い息をつくと。
「大馬鹿者!油断するな」
また男の声がした。何故かしらないがビリリっと頭の中に電気が走る様な気がして、ハッとした。
顧問「始め!」
同時にBが俺の手を狙って攻めて来ていた。
俺は慌てて竹刀を横に倒す。
そして、グルッと回る様な感じでBの面を叩けた。
一瞬背中を相手に見せたと言えばいいのかな。
モンハンの大剣の回り切りの高速バージョンと言うか、そんな感じでまぐれ一本入った。
声を出して居なかったからか、めちゃくだったからか、おしくも一本とは言われなかった。
Bの舌うちが聞こえた。
そんなのがゆっくりとした時間に感じていると、Bがコチラへ竹刀を振っていた。
俺は直に、足で踏ん張り、しゃがみこみ、竹刀を横に倒して、振り向きながら飛び込んだ。
『バシィイイイン!』と言う確かな手ごたえと音がした。
ただ、声は上がる事なく。
その後、あっさりと普通に面を取られた。
それが納得できず動揺しており、すぐに2試合目もアッサリと面取られ、二本ストレート負け。
終ってすぐに涙が出た。
俺には分からなかったけど、20分ほど続いた大激戦だったらしい。
デタラメなのにすばしっこく、嫌らしい攻撃をする俺に、顧問も驚いていたそうだ。
でも、そんなの関係なしに終った後、ボーッとしてた。
やはり、先ほどの一本が納得できなかった。
Bが、そんな俺の前に立ちポカリスエットを差し出してきた。
俺「なんだよ?」
B「飲めよ」
俺「毒でも入っているのか?」
B「そんな訳ないだろ。それ飲んだら少し来い」
俺はポカリスエットを一気飲みして見せて、無駄に勝ち誇った表情をして、Bは呆れ顔。
そのままBに言われるがまま、顧問の元へ言った。
B「さっきの試合なのですが。なんで俺さんへ一本あげなかったのですか?」
俺は驚いた。
顧問も驚いた顔をしていた。
B「不良だからですか?俺が納得しません」
顧問「・・・面は明らかに一本と認められない。胴に関しては・・・」
B「なんなんですか?」
顧問「声が・・・」
B「相手は素人ですよ? 一本にしてあげるべきだと思います。それに大会でも」
そんな感じでBが俺の一本を認めさせてくれようとしていた。
微かに嬉しかったが、同時に惨めに想い「もういい」と言った。
B「お前、また来いよ」
俺「もうこねーよ、白けた」
そう言いながら、学校を後にした。
本当に終わったと言うか、何も感情が湧いてこないと言うか。
とにかく何もかもが嫌になった。
その日は、丁度良く気取ってる不良が居て、喧嘩して、親呼ばれて。
そんな感じで終ってしまった。
一週間修行をさぼり、何もなくただ漠然とAたちとつるみ。
その中でもまた負けたと言う評判が広まって居て、居づらくなっていた。
そうであったからか、枕元に出てしまった。
武者さんが。
武者さんは何も言う事なく、俺の事を見ていた。
情けをかけている訳じゃないのは分かった。
むしろ、褒めてくれているのだと分かった。
そしたら、凄く涙が出て来て馬鹿みたいに泣いた。
武者さんはいつもの笑顔で、静かに俺の頭を撫でてくれた。
「本当なら勝者はお前だ。馬鹿者」
あの声が聞こえた。
やはり、あの時聞こえたのは武者さんの声だったんだ。
その後は声も聞こえなくなり、武者さんの姿もいつもより薄くなっていた。
俺「師匠・・・?」
涙目ながら武者さんを見ると、いつもの様にニコッと武者さんは笑っていた。
そして刀の鞘を俺に差しだして握れと、頷き目で言って来た。
俺はその鞘を握ると、妙に気持ちが落ち着き、同時に武者さんが居なくなるのだと悟った。
俺「師匠・・・!」
グッと鞘が引かれ、俺の体が持ってかれる様な感じになるが、体を保つ。
武者さんは「ほらな?」と言った感じだった。
勝手な解釈だけど「お前は強くなったぞ」って事だと思う。
武者さんは、そのまま俺に背中を見せると、スゥッと歩くように姿を消した。
あの後、心を入れ替えたと言うのも変だが、真面目に剣道がやりたく思い高校進学を選択した。
残念ながら今までの行いが仇となり、大した学校に行けなかったけど、無事進学はできた。
中学の剣道部には駄目元で入れさせてくれと頼んだが、顧問のBBAに拒否された。
影でBが「どうせなら8月ぐらいまでいいじゃないですか?」と言ったそうである。
ただ、Bとは試合後、それほど会話することはなかった。
元々かなりの実力者だったのもあり、進学先は剣道の強豪校に進んだのを知っている。
と、言うのも一度、対抗戦でBと当たったことあった。
その時は正々堂々、良い線で勝負できた。
ただ、1対2で俺の負けだったけど。
弱小剣道部では大会優勝を目指す事も出来ず、自分の剣道の段を取ることぐらいしか充実はなかった。
ジジィが馬鹿みたいに強くて、武者を思わず思いだしたけど。
一応、大学行って続けて、警察官になるのも考えていたのだけど、家の事情でどっちも叶わなかった。
そんなこんなで、適当に生きてきたけど、最近あのTマンションが壊される事を知った。
懐かしい思い出を昨日Aと語り、その余波で朝から話してしまった。
『落ち武者に剣道を教わった話』怖い話シリーズ38
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