双子の姉妹にまつわる恐ろしい話・・・
『 一つの真実』
県で1位、2位を争う私立の高校・・・
その高校には気味の悪い妙な噂があった・・・
喫茶店で、その噂話をしていた女学生たちに1人の婦人が話し掛けて来た・・・
『時が経つと、そんなお話になっていくのねぇ・・・』
今回は世にも恐ろしい怪談話『 一つの真実』をお伝えします。
毎度おなじみ心霊界の石原さとみこと、コワイキョウコです・・・
学校にまつわる怪談・・・
有名なものだと『トイレの花子さん』とか『音楽室の肖像画』とかがあるけど・・・
それらはただの都市伝説・・・
本当に怖い学校の怪談は、その学校の過去にまつわる・・・
それでは怖い怖い怪談話・・・
『 一つの真実』
どうぞお楽しみください・・・
※このお話は8分ほどで読むことができます。
『一つの真実』怖い話シリーズ53
その喫茶店は、ちょっとした高級住宅街にあった。
店内は広く、静かな曲が流れ、狭いながらもテラスがあり・・・
ゆっくりと本を読んだり、近辺に住んでいる奥さま達のお上品なティタイムを過ごすのに最適な場所であった。
・・・と言っても、決して敷居が高いわけではなく、県で一位・二位とされている私立のS高校や、公立のN中学校が近くにあることもあって、学生たちが立ち寄っていくこともできる、そんな店であった。
その日は、中学校の中間テストの最終日で、いつもより早い時間にその3人は来ていた。
「もう、最っ悪!絶対留年だ!」
「アスカって、1年の頃から試験最終日にはそれ言ってるよね。中学留年ってどんだけよ?www」
「でもさ、担任とかめっちゃ脅してくるじゃん。高校行けないぞ!とか」
「うーん・・・そろそろやばいね。ミズキは?もちろん、S高でしょ?家からも近いし、ミズキの成績なら楽勝でしょ?』
「うん・・・先生とか親はそう言うんだけど・・・」
「え?!んで悩むの?あそこなら、その後も安泰じゃん」
「う・・・ん・・・でもさ・・・ほら、S高って・・・有名な話があるじゃん・・・」
「あぁ!あの幽霊が出るって話?ほんとにミズキってその手の話、信じるねぇwww」
「え?!え?!なになに?知らないんだけど?」
「アスカは部活ばっかりのバスケ馬鹿だからね・・・実はS高、出るって有名なの。なんでも、いじめられてた双子が自殺して、未だに《ごめんなさい。許してください》って逃げ回っているとか・・・」
「えぇ?!自殺してもまだいじめられてるの?可哀想すぎでしょ?親もたまんないね」
「それがね、S高の話は本物らしいの。先生も、“必ず夜の8:00には学校を出ること”“絶対に一人で残らず、二人以上で施錠確認すること”って、取り決めがあるらしいの。いくら、将来有望と言われても、そんな学校行けない・・・」
そんな彼女たちに、ある女性が声をかけてきた。
全身黒服で、見るからに怪しげではあるが、黙っていても「品」を漂わせ・・・
まさに貴婦人と呼ぶのがふさわしい女性だった。
『時が経つと、そんなお話になっていくのねぇ・・・』
三人は顔を見合せ、人懐こいアスカが飛びついた。
「え?何か知っているんですか?おば・・・(やばい、この手の人にオバサンはやばい・・・でも、今さらお姉さんは・・・今さらでなくても言えない・・・)」
周りの空気が、一瞬固まった。
『うふふ、おばさんで大丈夫よ』
目が・・・笑ってない・・・
「あ、あの・・・おばさま、何かご存じなのですか?」
さすがミズキ。
しかも、自身の志望校でもある。
できるだけ情報は集めたいのだろう。
『フフフ、聞きたいの?聞く?』
私には、双子の姉がいる。
一般的に【双子】のイメージはどんなものだろうか?
私がよく耳にするのは、
『遠くにいても、怪我したりピンチに陥ったのを感じる』
『制服を替えっこして、それぞれの学校に入れ替わっていった。担任も気づかなかった』
等だが・・・
私たち姉妹は、とにかく仲が悪かった。
いや、お互い空気のように扱うのだ。
喧嘩もしない、口も利かない、干渉もしない…
そんな姉妹なのだ。
そして、姉はすべてにおいて、私より優秀だった。
大差があるのではない。
【わずかに】【いつも】姉が上なのだ。
そのわずかな差を、幼少期から続けられると、親や教師は自然に【デキの良い方】【デキの悪い方】と分けていくのだ。
毎度テストで平均95点をとったとしても、自宅に毎度平均98点をとってくる同級生がいるのだ。
しかし、だからといって、姉は私に自慢気な様子も優越感を感じた様子も見せない。
そう、空気相手だからだ。
二人の間では優劣はあるものの、私もS高に行くレベルは十分にあった。
自然と二人とも、同じ高校へ進むことになったが、その環境は中学の時と変わらない。
お互いがそれぞれの学生生活を送ればいいのだ。
高校では、入学してすぐに仲良くなった友人もでき、楽しく過ごしていた。
・・・1学期までは・・・
県でトップの学校でも、いわゆる『不良』と言われる部類はいるものだ。
そして質が悪いのは、頭が良い。
何かをしでかすにも要領が良いため、表沙汰にはならず成績も良い為、教師もある程度は見て見ぬフリをする。
そういう不良連中は、中学時代にもいたし関わらない事が一番だ。
何より、関りようがなかった。
住む世界が違う。
・・・はずだった・・・
新しい友人達と、楽しく新鮮な夏休みを過ごしたあと…
何故かこの『不良グループ』に目をつけられ、呼び出されるようになったのだ。
少しも心当たりはないが、そんなこと言える訳もなく・・・
私の『いじめ』が始まった・・・
昼休みや放課後に彼女たちはやってきて、私を連れ出しては殴る蹴るの暴力を有無を言わさず振るってくるのだ。
主に暴力を振るうのは3人。
指示を出したり、笑って見ているリーダー格が1人。
・・・そして、そのリーダー格の隣にもう一人・・・
姉がいた。
訳が分からなかった。
こういった種の者たちを、姉は憎しむように毛嫌いしていたはずだ。
それに、あんなにずっとお互い関わらず、干渉せず、存在していないかの様にしてきたではないか。
なぜ今さら・・・
1学期にできた友達は、わずか3ヶ月ほどの付き合い。
不良グループに連日呼び出しを受けている私とは、当たり前の様に離れていきクラスでも独りぼっちになっていった。
彼女達の暴力は、何ヵ月も続いた。
あの手この手と痛め付けられた。
一番たちが悪いのは、リーダーの女が機嫌悪い日だった。
全裸にされて、水をかけられ・・・
精神的な“いたぶり”をありとあらゆる方法でやられた。
うずくまる私の髪を掴んでは・・・
『まぁだだよ』
そう言って、少しも休ませることなく、暴力は続く。
それでも、彼女達が徹底していたのは、絶対に肌が露出している場所への攻撃はして来ないのだ。
始めは、“教師達に見つからない為に”かと思ったが、それは違うと感じた。
そう、姉の指示なのだ。
恐らく、親達に見つからない様にだろう。
もしバレでもしたら、ただの姉妹喧嘩では済まされない。
命令を“絶対に守られるほどの地位”に姉がいるのかと・・・
そんな所も解せなかった。
姉は、私が殴られている間、ただ見ているだけだった。
手も口も出さず、顔色一つ変えず。
ただ、いつもの様に冷徹な顔をして、じっとしているのだ。
つまり・・・リーダー格と同じ位置なのか?
何もかもが理解出来ないまま、いじめられ続く月日が経っていった。
ヘトヘトでボロボロになって帰宅しても、休んではいられない。
両親が仕事から帰って来る前に、汚れた制服を綺麗にし、破れた所はないか確認し、自分も風呂に入る。
服さえ着ていれば、身体中の痣や傷は見えず、後は何事もなかったように振る舞えばいい。
いっそ、両親に打ち明けられれば・・・
とも思ったが、やはりこれ以上姉妹仲のことで心配はかけれない・・・
姉も、私がそう判断するだろうと見越してのことなのだろう・・・
悔しいが、仕方がない・・・
私が、必死に制服についた血を洗い流しているときに姉は帰宅した。
姉は、夏休みからバイトをしているのだ。
帰宅した姉は、惨めな私をチラリと見たが眉一つ動かさず、いつもの涼しげな顔で部屋へ行ってしまった。
どうしてなのだろう・・・
私は、あの女のせいで、こんな目に合っているのに・・・
姉は学校で友達もでき、バイトまでして高校生活を謳歌している・・・
私は、連日殴ってくる彼女達より、姉が憎かった・・・
暴力はエスカレートしていった。
既に、彼女達も色々やり尽くし、飽きている様子も窺える。
それでも、やはり終わりはないのだ・・・
私は、すっかり疲れてしまった。
殴られることも、憎むことも、それらを隠し何事もない様に生活することにも・・・
誰も終わらせてはくれない。
もう、自分で終わらせるしかないのだ。
本当に・・・疲れたのだ・・・
終わらせる方法は、ただ一つしか思い浮かばない。
私は、その準備に取り掛かった。
身の回りの整理をした。
遺書も書いた。
ただ一言。
『お父さん・お母さん、ごめんなさい』だけ。
死んだ後、何かと探られたくはなかったのだ。
そして・・・マンションの屋上へゆっくりと一段一段、階段を上がっていった。
うちのマンションの屋上は、もともと誰も入れない様施錠されている為、フェンスなどは設置されていなかった。
しかし、数年前にどこぞの中学生がカギを壊し自由に出入りできるようになっていた。
管理人は気づいていたが、費用の問題からか修理はされていなかった。
屋上に侵入し子供が騒ぐ・・・といったトラブルもなかったので、このことは一部の理事役員だけの秘密となっていたようだが、子供の間で知らない者はいなかった。
「ここも今夜の私のせいで、カギの修理がなされるのだろうか・・・」
そんな、どうでもいいことを考えていた。
屋上の重い扉を開け、一歩踏み出すと・・・
こちらに背を向け、マンションに"腰かけて”姉がいた。
来ると期待はしていなかったが・・・
「持って来てくれた?」
姉は、振り向かないまま一枚のメモ紙をこちらに差し出した。
その紙には・・・
【この紙を持って屋上にきて】
と書いていた。
その紙を受け取りながら、話しかけた。
「そんな所に座って、怖くないの?」
『別に・・・』
何年ぶりの会話だろうか・・・
そして、最後の会話だ。
私は思いきり力を込め、姉の背中を押した。
自分たちでも、突然出くわすと「はっっ!」とするほど、私たちは瓜二つだった。
姉は、あまり喋らず笑わない。
表情・感情を全く表に出さない。
親たちでさえ、死んだのは私だと信じて疑わなかった。
私の字で遺書が出てきたのだから、当然かもしれないが・・・
そう、私は私の人生を終わらせ、姉として生きていく。
気に食わない連中とは言え、学校に友達がいて、バイトをし普通の高校生になれるのだ。
もう、一人ぼっちは耐えられない・・・
あんな連中でもいい。
一緒にいてくれる誰かがほしい…
葬儀などが終わり、久しぶりに登校した私は、姉の教室へと入っていった。
クラスメイトがお悔やみの言葉の一つもかけてくるかと思っていたが、誰も目を合わせてくれなかった。
そうか・・・生徒内では、あの『不良グループ』の一員として避けられているのか・・・
と言うことは、私がクラスの中で孤立するという立場は変わらない・・・
昼休みになると、あのグループの一人が私を誘いにきた。
そして、リーダー格の元へと一緒に向かう。
心臓が飛び出るほどドキドキしたが、リーダー格の女は・・・
『どう?大丈夫?』
と、優しく声をかけてきた。
ホッとしながらも、姉らしく感情を出さず、冷静を装いながら・・・
「うん・・・仲・・・悪かったし」
とだけ言った。
『そっか。そうだね。良かったよ。で、バイトは?行ける?』
バイト・・・?
違和感を感じた。
こんな場面で、なぜバイトの心配を?
キョトンとする私を見て、その女は高らかに笑い出した。
『あれ?私たちが同情して、契約打ち切ると思ったの?ないない!忘れたの?元々私らがムカついて、イライラしてたのはアンタにだよ?!私らの"ストレス解消”から逃れるのに、「バイト料を全部渡すから、勘弁してほしい」と、契約持ちかけてきたのはアンタでしょ?』
『まぁ、身代りに妹を・・・って聞いたアンタは一応抵抗したけどね。でも、結局保身のために、生贄に差し出したんだよね?私らは約束守って、あの子の【見える場所】への攻撃はしなかったでしょ?』
『同罪だよ!アンタもさ。いや、原因はアンタだったんだからさ。妹を自殺に追い込んだのは、アンタだよ。いい?“ご入金”は今まで通り、頑張ってもらうからねぇ』
そう言うと、私の肩をポンポンと叩き行ってしまった。
そうか・・・
私は全てを理解した。
なぜ突然、接点もなかったあいつらに目を付けられたのか。
なぜ姉が、あんな輩とつきあっていたのか。
なぜ私の言う事を聞いて、あの日屋上に来たのか。
そして・・・押してくれと言わんばかりに、あんなところに腰かけていたのか・・・
姉は、あの日私が何をしようとしたのか、全て分かっていたのだ。
毎日、自分のせいで、妹が暴力をふるわれている。
辛かったのは、姉の方だったのかもしれない。
そう・・・姉も終わらせたかったのだ・・・
わたしは、マンション最上階の階段にいた。
屋上は姉の一件ですぐにカギの修理がされ、出入りできなくなっていた。
姉がしていたように、私は階段の壁の上に腰かけていた。
姉が見た、最後の景色と同じものを見ていた。
もし、私たちが仲がいい姉妹だったら・・・
この様な事態でも二人で力を合わせ、戦うことができたのだろうか・・・
今からでも、仲よくできるだろうか・・・
私はポンと壁を蹴り、落ちていった。
店長が、婦人の紅茶のおかわりを持ってきた。
「またぁ、変なこと言って、怖がらせてますね?」
この言葉に、アスカ達は忘れていた呼吸を思い出したかのように深く息をした。
「えー、やっぱり作り話ですか?そうですよね。死んじゃった人の考えが分かりすぎだもん。それに、“学校に出る”って幽霊が、マンションで死んでるし!!おばさま、お話しがお上手!!」
すると、店長が手を振りながら・・・
「違う、違う。違いますよ。恐らく話しは本当。この人ね、そういうの見えるんだか、感じるんだか・・・有名な人なんですよ。だから、怖がらせるなって言ってるんです。」
優しく微笑むように言って、下がっていった。
婦人は、新しい紅茶にミルクを入れ、フフフと笑うと・・・
『続き、聞くかい?』
と聞いてきた。
三人は、ゴクリと生唾を飲みこみ、揃って頷いた。
双子の死から一ヶ月ほど経って、学校で騒ぎが起こった。
不良グループのメンバーが、次々に飛び降り事故を繰り返したのだ。
静かな授業中に急に悲鳴をあげ、廊下に飛び出す者。
昼休みの生徒達が溢れる廊下を、逃げる様に駆け抜けて行く者。
全員が追いやられる様に、上へ上へと走って行き、そして、飛び降りたのだ。
学校側が対策をとる暇もなく、続き様にそれは起こった。
全員に共通していた事は、みんな逃げながら必死に何かに謝っていたと言う。
そして、飛び降りたあと・・・
《まぁだだよ》
と聞こたそうだ・・・
『これが、あの学校で起こったことだよ』
「つまり・・・毎日謝りながら逃げ回っているのは・・・」
『双子も、やっと仲良くなれたんだろうかねぇ・・・あれから何年も経つのに、未だに許さず、毎晩突き落としているんだろう。二人でね』
少し笑みを浮かべながら、婦人はミルクティに口をつけた。
『一つの真実』怖い話シリーズ53
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