とある地方で起こった怖ろしい話・・・
『マガガミさん』
婆ちゃんが住む村には池がある・・・
その池には子供が近づいてはいけないらしい・・・
村の子供と仲良くなった俺は興味本位で・・・
今回は怖ろしい怪談話『マガガミさん』をお伝えします。
毎度おなじみ心霊界の石原さとみこと、コワイキョウコです・・・
禁忌・・・
やってはいけないこと・・・
近づいてはいけない場所・・・
今回は、そんな禁忌を犯してしまった子供たちのお話です・・・
なんか怖い話って、この手のパターン多いですけど・・・
どこまでガチなんですかねぇ・・・?(汗)
それでは怖い怖い怪談話・・・
『マガガミさん』
どうぞお楽しみください・・・
※このお話は6分ほどで読むことができます。
『マガガミさん』怖い話シリーズ111
うちの母方の婆ちゃん家がある村での話。
申し訳ないが俺自身にも真相?的なものはわからないから、すっきりしないしオチみたいなもんはない。
本題に入るけど、婆ちゃん家の村には山がある。
その山の中に凄いキレイな緑色の池がある。
限りなく青に近い緑色ってゆうか、透明気味なパステルカラーつうか、とにかくめちゃくちゃキレイなんだけど、そこには近づくなって村の子どもは言われてた。
なんでか聞いても、答えはお決まりの・・・
「子どもは知らなくていいこと。だけど決して近づくな」
・・・だった。
でも子どもだからやっぱり気になるし、婆ちゃんや村の大人から池の特徴は聞いてたから、そんなキレイな池なら見てみたかった。
村の子もそれは同じだったみたいで、村に行って遊ぶ度に行ってみようって話にはなってた。
ただやっぱり大人たちがあれだけきつく言うし、子どもの中だけの噂話だけど・・・
「あの池は行ったら二度と帰れない」
とか・・・
「底無しだから落ちたら確実に死ぬって聞いた」
とか言われてたから、実行には移せてなかった。
でも中学生になって帰省したとき、小さい頃から遊んでた村の子たちが・・・
(以下、太郎、二郎、花子。太郎と花子は双子の姉弟。二郎はその従兄弟)
「二度と帰ってこれないなら、なんでみんな池の特徴わかんの?」
「底無し池なんて、こんな時代なんだから本当にそうなら埋め立てられてる」
と、なんか現実的に思える意見を言ってて、俺もそれに賛同した。
そして最終的には・・・
「本当にそんな池あんの?作り話かもよ?」
ってなった・・・
そんでお決まりの・・・
「確かめにいこうよ」
になってた。
結果、俺ら三人は朝早くから待ち合わせして、山に向かった。
山自体は低い山だし、迷っても夜までには出られるだろうとタカをくくってた。
特に俺と太郎と花子は中学生になりたてだけど、二郎は二年生だし、柔道やってるから最悪クマとか野犬が出ても巴投げして倒してやんよwwとか言ってて、安心しきってた。
無理に決まってんのにな。
そんな話しながら、結局三時間近く歩き回って疲れてきたころ、なんかやけに木が密集してる変な場所を見つけた。
うまく説明できないけど、そこだけ本当に木の量がやたら多くて、無理矢理木を埋めたみたいなかんじで獣道すらない。
「絶対ここだよ、見るからに怪しいし」
先頭きったのは花子で、もともとお転婆だったけど男三人が微妙に躊躇ってんのに、木の隙間をずかずか進んでいく。
仕方なく俺らも花子について進んだ。
そしたら、案の定そこに池があった。
センターオブジアース?だっけ、あの映画の、世界を発見したシーンみたいな感動があった。
実際、池は想像以上に透き通ってて、めちゃくちゃキレイだった。
でも、木のせいでなのか薄暗いし、池の横にある汚い小屋?が景観を台無しにしてた。
最初はみんなはしゃいでたし、花子は用意してたらしい空のペットボトルに池の水を汲んだりしてた。
けど、やっぱり隣の汚い小屋が気になってきた。
小屋は小屋というより長屋みたいな、ちょっと小屋にしちゃ横長な建物で、見るからに汚いし怪しい。
山姥でも住んでんじゃねえの?って感じ。
そしたら二郎が、お得意の・・・
「山姥がいたら巴投げで~」
を始めて、小屋に入っていった。
俺らも後に続こうとしたが、ここまで空気だった太郎が・・・
「やや、俺は行かへん。ここにおる」
と言い出した。
花子は太郎のヘタレ具合にキレていたが、太郎は頑として譲らなかった。
「行きたかったら、花ちゃんと二郎ちゃんとで行ったらええやん。梅ちゃん(俺)は僕と一緒におろ。な?」
と、なぜか俺だけは引き留めた。
俺は正直、怖いながらも小屋に興味があったんだが、のび太を地でいくようなひ弱な太郎を置いてくのも、なんかあったら嫌だったので残ることにした。
小屋に入ってった二人を見送りながら池の縁に座り、太郎と話をした。
「なんであそこ入るん嫌なん、怖いんか?」
「あっこは嫌や。怖い」
「ほな、なんで花子と二郎ちゃんは行って良かったんよ。」
すると太郎は・・・
「花ちゃんは僕にいけずばっかりしよるし嫌い。二郎ちゃんは乱暴やのに口だけやから嫌い。やからええねん。死んでもかめへん」
「やって花ちゃんはいつも偉そうにうるさいし、僕をミソカス扱いしよるし、二郎ちゃんはすぐシバく。ふたりとも嫌いや。死んでもええねん、死んでくれたらええねんよ。やから来たんや、マガガミさんに殺してもらいたかったんや」
悪口のなかに聞き慣れない言葉が出てきて聞き返した。
「マガガミさんて、なんやねん」
「村の子らはみんな知らんよ。花子も二郎も知らん。アホやから知らんねん。僕は知ってたんや、ここには、マガガミさんがおるねん。キチヅの婆ちゃんがマガガミさんのことを僕には教えてくれたんやで、それは僕が賢いからやで。」
「せやから、マガガミさんてなんや!」
「梅ちゃんは僕に優しいから助けたる。けど、花子と二郎はあかん。アホでイキリで愚図やからな、死んでもええねん。マガガミさんに殺してもらうねん」
だんだんと、ただの悪口から呪詛になってきた。
いつの間にかふたりとも呼び捨てになってるし。
太郎は口から唾を飛ばしながらずっとしゃべりまくっていたが、そのうち・・・
「ヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョア」
と、変な笑い声を上げだした。
「ヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアひねヒョヒョアひね、ヒョアヒョアひねヒョアヒョアヒョアひねヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョア」
気持ち悪かった。
三角座りをしたまま、顔だけこちらに向けて笑っている太郎は気が触れたようにしか見えなかった。
その時、花子と二郎がいくらなんでも遅すぎることに気がついた。
太郎からも離れたかったので、俺は小屋に向かった。
「そこにおれよ!二人みてくるから!」
そう声をかけると太郎は・・・
「もう遅いでェ」
と言って笑った。
その顔が気持ち悪くて吐き気がしたが、無視して中に入った。
そこは、真っ暗で変な匂いがした。
なにかこげたような、腐ったような匂い。
さらに吐き気がしたが中を進むと、突き当たりの部屋から・・・
「ヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョア」
と、変な笑い声がした。
躊躇いながら中にはいると、そこには、床に座り込んでいる花子と二郎がいた。
「ヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョア」
「ヒョアヒョアヒョアヒョアひぬひぬひぬひぬヒョアヒョアヒョアヒョア」
ふたりとも、太郎と同じ笑いかたをしていた。
気持ち悪くてしかたなかった。
とりあえず誰か呼んでこなきゃ、俺は振り返った。
そしたら、目の前に白目が浮かんでいた。
失明した人のような、黒目に白い膜がはったような、白目。
二つの白目だけが、ぽかんと浮かんでた。
意味のわからん悲鳴を上げて、俺は壁に後ずさった。
するとなんだか、壁がネチャネチャしてた。
さわってみると、壁一面がネチャネチャしてる。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!
すぐに逃げ出したくてしかたなかったが、白目は微動だにしないし、動いたら追いかけてきそうで怖い。
白目はじっとこちらを見てた。
呪い殺されるんか俺、と思った。
目をこれ以上合わせたくなくて、顔を右に反らした。
そしたら・・・
「やケ、遅いてゆうた、やんかァ」
窓から顔を半分だけ出した太郎がいた。
太郎の両目は、浮かんでる白目と同じになっていた。
「ヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒョアヒィヒィヒィヒィひゃはははははははひゃはははははははひゃはははははははヒョアヒョアヒョアヒョアヒョア」
太郎が笑ってた。
花子も二郎も笑い出した。
白目は浮かんでるまま。
もう耐えられなかった。
半狂乱になりながら、俺は走って小屋を出て山を降りた。
ずっと後ろから・・・
「ヒョアヒョアヒョアヒョア」
って聞こえてきてた。
涙と鼻水を撒き散らして逃げた。
山を降りたら、まだ昼間だった。
とっくに夜になってると思ったのに。
山を降りて村に出て、最初に会ったのは太郎と花子のじいちゃんだった。
「梅!なんや、お前、お前は!お前はあぁぁァア!」
いつも優しかった姉弟のじいちゃんは口から泡みたいな唾を吐きながら、すごい勢いで俺に近づいてきた。
「いったんか!いったんか!いったんか!」
キチな形相で俺を揺さぶり問い質すじいちゃんに、俺はすべて伝えた。
山に入って池と小屋をみたこと、太郎のした話、白目とネチャネチャの話、三人が狂った話、まだ山にいる話。
何度も舌を噛みながらもしゃべって、三人を助けてくれ、白目は何や、俺も呪われたんか、あそこは何なんや、と叫んだ。
じいちゃんは・・・
「もうええ、もうええ、梅だけは大丈夫や、梅は助かった、大丈夫や」
と言いながら俺を抱きしめてくれた。
俺だけは、って、それじゃあ太郎たちは?
じいちゃんの孫は太郎たちで、俺じゃないのになんで心配しない?
色々パニックになったが、なぜか俺は、じいちゃんに俺の体についたネチャネチャがついちゃダメだ、と急に思って、じいちゃんを引き剥がした。
そして、自分の体についたものをみた。
それは、すごくマヨネーズに似ていた。
ただし色は黒と赤のまだら。
ネチャネチャ具合がマヨネーズなかんじ。
そして、とても臭かった。
鼻をツンとさせる匂い。
とりあえずそのあたりで記憶が途切れた。
次に気づいたら、俺は婆ちゃん家の広間で寝てて、まわりには大人がたくさんいた。
両親は号泣しながらも俺に話しかけず正座してて、他の人たちもそれは同じ。
太郎たちの両親もそこにいたけど、泣きながら俺を見ていたが黙ってた。
そこで俺は自分の体が動かないことに気づいた。
縛られてたわけじゃないのに、何故か動かない。
声も出せない、ただ目が開けられるだけの状態。
なんだこれ?と、またパニックになってたら、太郎の婆ちゃんがやっと話しかけてきた。
「梅ぼん、婆ちゃんの右の目、見てみい」
太郎の婆ちゃんの右の目は昔事故でなくしたので、義眼がはまってる。
それは知ってたし、今さら見て何になるんだろうと思ったが言われるままに見た。
「どしてん、別にいつもとおんなじや、焦点は変やけど、婆ちゃんの目や」
先程まで出なかった声が出た。
とたんに大人たちはワアッと歓声を上げて、良かった良かった、梅は助かった、と抱き合って泣きだした。
両親は俺を抱きしめて泣いたし、太郎たちの両親まで泣きながら
「良かったなあ梅ちゃん、良かったなあ」
と喜んでた。
でも、それが気持ち悪かった。
自分の子どもは気が狂ったかもしれないのに、なんで恨み言も言わずに喜んでんだか、そう思った。
「他の三人は?太郎やらはどしてん」
俺は聞いた。
けど大人たちは・・・
「なにゆうてんねん、朝からずっと家におるがな。梅ちゃん、これに懲りたら二度と『ひとりで』山いったらあかんよ」
と言った。
なんだ、そう言うことになったんか。
俺は『ひとりで山に入った』ことになったんか。
太郎らは婆ちゃん家の蔵かどっかに閉じ込められたんやなあ。
気が触れてたもんな。
そう理解したから、何も言わなかった。
それから二、三日して、俺は両親と地元に帰ることになった。
あれ以来、太郎たちには会わなかった。
村のひとたちが見送ってくれたなかにも、太郎たちはいなかった。
俺が二十代半ばになった今も婆ちゃんは健在で、季節ごとに俺は村に行くが、村人たちは相変わらず優しいし、太郎たちの両親も変わらない態度だが太郎たちは相変わらずいない。
太郎たちのことをまわりに尋ねると花子は嫁いで東北、太郎と二郎は二人で同じ会社に入り、揃って海外にいるとのこと。
学生のときは三人とも東京の学校にいったと言っていた。
本当かどうかは、あれから会ってないからしらない。
白目やネチャネチャの正体も、マガガミ様が何かも、太郎たちの行方も太郎が言っていた「キチヅの婆ちゃん」なんてひとは村にはいないので、誰のことなのか、もわからないが、あれから何年も過ぎた今に至るまで俺には何も害はないし、変化もない。
白目やネチャネチャも、あれ以来見てない。
両親や村人に詳しいことを尋ねてみたこともあったが・・・
「夢でも見たんだろう。お前は山にひとりで入って、熱射病になって山から降りてきた」
「池?そんなもの知らないよ、初耳だ」
と言われた。
あのとき散々池について噂しあった子どもたちに同じことを尋ねても・・・
「池なんて知らない」
と平然と言われる。
『マガガミさん』怖い話シリーズ111
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