オカルト・怖い話

『背無し』怖い話シリーズ64

ある会社員が体験した怖ろしい話・・・

『 背無し』

会社からの帰路の途中、ある大学の前を通る・・・

そこは見晴らしの良い直線だが、なぜか事故が多い・・・

そして雨の日も昼も夜も、ただ無表情で突っ立っているオッサンが・・・

今回は怖ろしい怪談話『 背無し』をお伝えします。

怖異 恐子
皆さん、こんにちは・・・

毎度おなじみ心霊界の石原さとみこと、コワイキョウコです・・・

同じ場所に縛り付けられた霊のことを地縛霊とか言いますよね・・・

この地縛霊って、何か目的や意思があったりするんですかねぇ?

絶対にやられたくないこととか・・・

逆にやって欲しいこととか・・・

何を考えているのか解らないから不気味だけど、何かしら意思の疎通が出来れば、不気味じゃなくなるのかな?

それでは怖い怖い怪談話・・・

『背無し』

どうぞお楽しみください・・・

※このお話は3分ほどで読むことができます。

『背無し』怖い話シリーズ64

 

会社からの帰路の途中、ある大学の前を通る。

そこは見晴らしの良いただの直線だが、何故か事故が多いことで有名だった。

その道をあまり使わない人には分からないだろうが、

毎日車で出勤するオレや同僚には事故の理由は明白だった。

あるおっさんが原因なのだ。

 

そのおっさんは大学手前の横断歩道の脇に立っている。

それも毎日。

雨の日も昼も夜も、ただ無表情で突っ立っている。

そして何故かカラダごと真っ直ぐこちらに顔を向けているのだ。

おっさんに気付いてからしばらくは「気味が悪い人がいるなぁ」程度の認識しかなかった。

しかし更なるおっさんの異常性に気付くのに、そう時間はかからなかった。

 

おっさんはカラダごとこちらを向いている。いつ、どんな時でも。

例えば横断歩道の手前30mからおっさんを認識したとする。

 

「ああ、今日もいるな。そしてこっち見てる・・・」

 

そのまま横断歩道を通過して、素早くバックミラーでおっさんを確認すると、やはりこちらにカラダごと顔を向けているのだ。

この異常さが理解出来るだろうか?

 

おっさんはどんな時でも必ず、真正面からこちらを見ているのだ。

向きを変える気配すら見せず、瞬時にこちらを追跡してくる。

それに気付いた時オレは確信した。

あのおっさんは人間ではないのだと。

 

うすら寒さを感じたオレがそのことを同僚に話してみると、そいつもおっさんのことを知っていた。

何でも地元では「背無し」という名称で有名らしい。

確かにおっさんは正面しか見せない。

後頭部や背中は見たことがなかった。

変な霊もいるんだな、とその日は同僚と笑い合って終わった。

 

オレがビビりながらも、ある思いを持ったのはその時だった。

何とかしておっさんの背中が見たい。

そう思うようになったのだ。

毎日通勤しながらおっさんを観察する。

普通に通るだけではダメだ。

おっさんには全く隙が無い。

通過後、バックミラーに目を移す瞬間におっさんはカラダの向きを変えてしまう。

オレはチャンスを待つことにした。

 

数日後、残業で遅くなったオレは深夜の帰路を急いでいた。

そして、あの道に差し掛かる。

目をやると・・・やはりいた。

おっさんがこちらを向いている。

「背無し」の由来を思い出したオレは素早く周りを確認した。

深夜の直線道路。

幸い前後に他の車は無く、歩行者もいない。

信号は青。

チャンスだった。

 

横断歩道の手前でぐっと車速を落としてハンドルを固定する。

とにかく、ゆっくり真っ直ぐに。

そして、心を落ち着け視線を向けた。

おっさんはいつものように無表情でこちらを見ている。

 

目は何の感情も示しておらず、本当にただ立っているだけだ。

しかし改めてじっくり見るおっさんは、いつもより不気味だった。

何を考えているか分からないというか、得体が知れないのだ。

 

やがて車はゆっくりと横断歩道を横切っていく。

目線はおっさんから外さない。

怖くても意地で見続けた。

するとオレが目線を切らないからカラダの向きを変える暇が無いのか、いつも正面からしか見れなかったおっさんの顔の角度がゆっくりと変わっていく。

車の動きに合わせてゆっくり・・・ゆっくりと・・・

おっさんは始めの向きのまま微動だにしない。

 

ついにおっさんの完全な横顔が見えた時、「これはいける!」と確信した。

おっさんから目線を切らないためにオレも顔の角度を変えなければ行けないため、今や車の後部ガラスからおっさんを見るような体勢だ。

当然、前なんか見えちゃいないが気にもしなかった。

もうすぐで「背無し」の由来に打ち勝つことが出来るのだ。

 

そうして、ゆっくりと永い時間が流れ・・・

ついにその瞬間が訪れた。

「背無し」の今まで誰も見たことの無い背中が後頭部が、今はっきりと見えているのだ。

それはあっけない程に凡庸な背中だった。

何一つ不思議なところは無い。

しかしオレの胸にはささやかな達成感があった。

じっくりと背中を観察し満足感を味わったあと、オレはようやく目線を切って前を向いた。

いや、向こうとした。

 

目線を切って前を向こうとしたオレは・・・

あるものを見て固まった。

助手席におっさんがいた。

もの凄い怒りの形相で・・・

心臓が止まったかと思った。

 

「うわぁあ!」

 

オレは悲鳴を上げブレーキを踏んだ。

徐行していたはずの車は何故か強烈な衝撃とともに電柱に激突し、オレは失神した。

 

翌朝、病院で目が覚めたオレは、すぐに警察の聴取を受けた。

幸いにオレを除いて怪我人は無し。

オレの車が全損した以外に大した器物損壊も無かった。

警察は事故の原因をスピードの出し過ぎによる暴走運転と断定したが、オレは抗議する気力も無かった。

あんなこと、話す気すら起きなかった。

 

あれから5年。

オレは通勤のために今もあの道を走っている。

おっさんは変わらずいるし、相変わらず事故も多い。

ただ一つだけ変わったことは、オレがおっさんの方を見なくなったことだろう。

あの時、聴取の警察官がボソッと言った・・・

 

「今回は連れて行かれなかったか」という言葉が今も耳から離れない・・・

 

『背無し』怖い話シリーズ64

怖異 恐子
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ゆきキャベツ

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