地方の伝承にまつわる怖ろしい話・・・
『アカエ様』
俺が小学校低学年の頃の話・・・
海沿いの町に住んでいた俺はある日、近所の友達と海岸でかくれんぼをした・・・
始めて1時間経った辺りで留子と言う子が見つからなくなり・・・
今回は怖ろしい怪談話『アカエ様』をお伝えします。
毎度おなじみ心霊界の石原さとみこと、コワイキョウコです・・・
今回は地方の伝承系怖いお話・・・
地方って独特な信仰の神様のがいたりしますけど・・・
中には幸運を運んで来るだけでなく、同時に災いも運んで来るなんてのもありますよね・・・
今回もそんな感じの神様が登場しますが、なんかそれってホントに神様なのだろうかと、やや疑問を感じちゃいます(汗)
それでは怖い怖い怪談話・・・
『アカエ様』
どうぞお楽しみください・・・
※このお話は4分ほどで読むことができます。
『アカエ様』怖い話シリーズ155
俺が小学校低学年の頃の話。
といっても、もう三〇年以上前になるけど・・・
秋田県の、とある海沿いの町で育った俺らにとって、当然海岸近くは絶好の遊び場だった。
海辺の生き物を探して無意味にいじくってみたり、釣り人に餌を売りつけて小遣いもらったりと、まぁ無邪気に遊ぶ毎日だった。
しかし、かくれんぼだけは海の近くでやってはいけないと周りの大人にきつく言われていた。
まぁ海は危険が危ない場所が一杯あるからな。
変な所に隠れられて大怪我や命を落とす事故を心配してのものだろうと、子供ながらに理解していた。
しかし理解しているとか何とかいったって、そこはしょせん子供。
周りに誰もいなけりゃ、やっちゃうもんなんだよね。
俺と近所の幼なじみ、俺と貫太・篤治郎・留子・の四人でかくれんぼをしたことがある。
当時のガキにしちゃあ丸々と太っていた実質ガキ大将の留子が、どうしてもかくれんぼしたいって聞かなかったんで、俺ら男はなんか臆病者扱いされるのも嫌だったんで付き合うことしたんだわ。
しぶしぶ始めたとはいえ海の近くで変なくぼみとか一杯あって、めちゃくちゃ楽しかったのを今でも覚えてる。
危険な場所ってのは基本的に楽しいものだよね。
かくれんぼを始めて一時間くらいたったころ、貫太が鬼だったんだけど留子がどうしても見つからない。
仕方なくかくれんぼを中断して三人で留子を探すことにしたが、なかなか見つからないから三人で手分けして探すことにした。
それでも見つからないから、もうあきらめて帰ろうと思ったとき・・・
さっき調べても見つからなかった岩場のくぼみにに留子を見つけた。
ただ留子一人じゃなくて、なんかやたらと立派な和服をきた爺さんが一緒だった。
ガキだった俺は、家の人間が迎えに来たから勝手にかくれんぼ中断しやがったなと一瞬思ったが、どうも様子がおかしい。
普段は大人相手だろうが子供相手だろうが、のべつまくなしに騒ぎまくる留子がやけにおとなしい。
和服の爺さんが何か話てるのにも反応せずに、一点を見つめて動かない。
これはやべぇんじゃねーの・・・
そう思った俺は、幸い二人ともこっちに気づいてないようだったので、気づかれないように様子をうかがうことにした。
よく見てみると和服の爺さんは、こんな海っぺりだって言うのにぜんぜん濡れていなかった。
爺さんはひとしきり留子の体をべたべたと触ったあと、懐から鉄製の串のようなものを取り出すとおもむろに留子のわき腹に突き刺した。
俺は爺さんの行動にびびって固まった。
正直しょんべんも漏らしていた。
しかも爺さんは、その串を一本ではなく次々と留子に差し込んでいく。
しかし奇妙な事に血はぜんぜん流れてこない。
留子も串を刺されまくって、黒ひげ危機一髪みたいになってるのにピクリとも動かない。
そのうち、串を伝って黄色っぽい白いどろどろとしたものが流れ出してきた。
すると爺さんは串の根元のほうに、白い袋のようなものを取りつけはじめた。
どうやら、そのドロドロを袋に集めているようだった。
多分ものの二、三分くらいだと思うが、どうやら袋が一杯になったらしく爺さんは一つ一つ口を縛り袋を纏めていく。
一方の留子はあんなに丸々と太っていたのにいつの間にか干からびたミミズのようになっていた。
これは冗談抜きでやばいものを見てしまったと俺が思っていると、爺さんが不意に俺のほうを向いた。
そして何か言おうとしたのか口を大きく《あ》の形にした。
と思うと、後ろから大人の声で・・・
「コラー、ドくそがきが!あんだけここでかくれんぼすんなっていってんだろ!」
と怒鳴る声がした。
振り返ると貫太の父。
どうやら留子が見つからなくてあせった二人が、大人に報告しに行ったようだ。
俺は留子が干物になってしまったことを伝えるのと、変な爺さんから逃げるのにで貫太父のほうへ駆け出していた。
かなり本気の拳骨ともう一怒鳴り食らっておれが、留子のところまでひっぱって貫太父をつれていくと、干物ではなく太ったままの留子が倒れていた。
あの爺さんも、串で刺された跡もきれいさっぱりもなくなっていた。
結局留子はかくれんぼ中にこけて頭打って気絶していたと言うことで病院に運ばれ、その日の夕方には目を覚ましたらしい。
一方で俺ら三人は死ぬほど説教食らったが、俺はさっきの光景が目に焼きついていてろくに説教も聴いていなかった。
それから数日は留子は何もなくピンピンしていて、近所のクソガキの上に君臨していた。
俺もアレは暑さでおかしくなってみた幻だろうと思い込み始めていた。
しかし一週間ほどしたころからガキの俺らの目から見ても、明らかに留子はやせ始め・・・
その後、なぜか姿を見なくなっていった。
どうやら、何かの病気をしたらしく入院することになったらしい・・・
俺は母親に連れられて貫太篤治郎やらと一緒に留子の見舞いへ行った。
そこにいた留子は以前の憎たらしく太っていた留子ではなく、ずい分とやせ細った姿だった。
しかも痩せているのではなく見るからに肌に水気がなく、子供とは思えないほどしわだらけになっていた。
あの時の干物の二、三歩手前という感じだった。
俺はもうこいつ死ぬんだなと思った。
見舞いから帰って、俺は母親に例の爺さんと串に刺された留子のことを話した。
母は俺の話を聞き終えると、そう、と一言だけ言ってどこかに電話をかけた。
そして電話が終わると明日、その時のことを聞きに人が来るから正直に答えなさいと俺に言った。
普段にもまして辛気臭いな、と俺は思った。
次の日、学校の授業の途中に校長に呼び出され、校長室で見知らぬおっさんに爺さんと留子の話を聞かれた。
そのおっさんは古い絵を見せてきて、その爺さんはこんな格好じゃなかった?と聞いてきた。
その絵にはみすぼらしい格好をして頭が不自然に三角な男と、例の爺さんみたいなきれいな和服をきた男がが描かれていたので、俺は「こっち和服の男の格好に似ている」と答えた。
すると、おっさんはため息を一つ吐いて、校長にどうやらアカエ様ではないようなのでこれ以上の心配はないでしょうと言った。
校長も何か安心したような感じだった。
そのあと俺を無視して、今年は豊漁になるだとか、漁協から留子の家に見舞金を出すとか言う話をしていたが、俺がまだいることに気づいた。
その後、すぐに追い出された俺は授業に戻った。
留子は結局、そのあと割とすぐ死んだ。
留子の葬式で悲しそうなのは、留子の家族だけ・・・
他の大人は、みんなニコニコしていて嬉しそうな感じだった。
正直、俺も留子が嫌いだったので、心のそこでは嬉しかった。
だけど今まで経験した葬式との違いを、少し不気味に思っていた。
俺の父親も留子の両親に、神様が持っていったようなものだから、と変な慰めをしていたのを覚えている。
その年の秋は、あの時の盗み聞いたおっさんと校長の話どおり、ここ数十年で一番の豊漁になった。
しかし俺の町以外の港では、それほどでもなかったらしい・・・
俺の町は大分潤ったみたいだけど・・・
俺も貫太も篤治郎も栄養状態がよくなったせいか、みんなころころと太った。
ここで終わりだけどガチで実話です。
『アカエ様』怖い話シリーズ155
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